新刊『テキトーだって旅に出られる!』

去年から書いていた本が、ようやく4月25日の発売までこぎ着けた。ほぼ書き下ろしだが、以前雑誌に書いた原稿を引っ張り出して、大幅に修正や加筆を加えたパートもある。 産業編集センターという出版社から執筆の依頼を受けたのだが、注文は「旅に出たくなる…

旅先での「選択」の先にある運命

12年も前に、新潮社の『波』という雑誌に書いた書評をブログに掲載する。『「バンコク・ヒルトン」という地獄 ― 女囚サンドラの告白』(サンドラ・グレゴリー著/川島めぐみ訳/新潮社)という本だ。 なんでいまさらと思うが、大掃除していてこの『波』が出…

ピラミッドは誰が造ったのか〜『ピラミッド・タウンを発掘する』を読む

日本のインディ・ジョーンズ、などというと本人が気を悪くするかもしれないが、新進気鋭のピラミッド学者、河江肖剰(かわえ・ゆきのり)さんの『ピラミッド・タウンを発掘する』(新潮社)を読んだ。 エジプトを訪れた際、もちろんピラミッドを見にいった。…

ギターのギブソンが特殊部隊に襲われた訳〜『国家を喰らう官僚たち』を読む

国家を喰らう官僚たち: アメリカを乗っ取る新支配階級作者: ランドポール,Rand Paul,浅川芳裕出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/09/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る ザンビアが不況で通貨が急落し、どうもこうもならない大統領が「…

真知さんの新刊『たまたまザイール、またコンゴ』の話

1年半以上もブログをさぼってしまった。今さら何を書けばいいのかわからないという感じさえする。いつまで続くかわからないけど、今回はこれまたひさしぶりに出た田中真知さんの新刊『たまたまザイール、またコンゴ』(偕成社)をご紹介したい。 真知さんの…

なぜクリップは磁石に吸い上げられてしまうのか。『ワープする宇宙』を読む(ふりをする)。

僕には寝付きの悪い夜というのが近頃まったくない。もともと寝付きはいいのだが、以前は年に2、3日は寝付けない夜があった。それがまったくなくなったのは、抜群の効き目を持つ“睡眠薬”があるからだ。 それは量子物理学の本だ。読んでもさっぱりわからないの…

新刊『バルカンの花、コーカサスの虹』の制作終了(5月20日発売)

このところずっと取り組んでいた新刊『バルカンの花、コーカサスの虹』の制作がようやく終了した。旅行人本誌に掲載したコーカサス編とルーマニア編に加筆し、あらたにバルカン編を書き下ろして1冊にまとめた。296ページとボリュームたっぷり、写真も図版も…

『あの日、僕は旅に出た』の装幀

今度出した私の新刊『あの日、僕は旅に出た』の装幀は鈴木成一さんがやってくださった。装幀に興味がある方なら鈴木成一さんをご存じない方はいないだろうが、人気、実力ともトップクラスの装幀家だ。もちろん私も大ファンで、これまで何冊かの本をデザイン…

『謎の独立国家ソマリランド』

高野秀行さんの『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)の紹介だ。仕事や雑事に追われて、なかなか書けないでいたが、その間に重版もかかり、順調に売れているようでご同慶の至りである。とにかくおもしろいことはまちがいない。私はこれまで高野さんの…

ヒッグス粒子は「神の粒子」なのか ──『強い力と弱い力』

『旅のグ』が筑摩文庫に入ることになった。私が解説を書かせていただいた。この本は、旅行人にとって思い出深い、記念すべき本だった。5月に発売されるそうです。付録ページも付くそうですので、どうぞお楽しみに。 さて、また理科系の本の紹介。興味のない…

サブウェイのサンドイッチは「たまたま」短かったのか。

先日、オーストラリアで、サンドイッチの「サブウェイ」が訴えられるという事件があった。なんでも、「フットロング」の商品名で販売するサンドイッチの長さが1フット(「フィート」の単数形、30.48cm)より短い11インチ(28cm)しかないと客が怒ったのだそ…

岩波新書『木造建築を見直す』

またずいぶんひさしぶりのブログ更新になってしまいました。すいません。毎年、50回更新を目指していたが、今年はお知らせを含めてこれで35回。たぶん50回には届きませんね。 フェイスブックだのツイッターだのいろいろやっていると、ブログという言葉がなつ…

フェルマーの最終定理

『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン、新潮文庫)を読み終えた。お断りするまでもないが、この本は、数学の定理の証明を書き記したものではない。私がそんなものを理解できるわけがない。この定理を証明した数学者の物語を描いたノンフィクションであ…

人間の感覚の不思議さ──『妻を帽子とまちがえた男』

タイトルに興味を覚えて、ずいぶん前に買った本をようやく読み終えた。『妻を帽子とまちがえた男』とは、脳の障害のせいで、妻を帽子とまちがえて、妻を被ろうとする男の話だが、それ以外にもさまざまな症例が紹介されている。 最初この本を読み始めたときは…

さらに小島剛一『再構築された日本語文法』

ツイッターにずらずら書いているうちに長くなってしまったので、以下にそれをまとめ、書き足しました。右側のツイッターですでに読んでしまった方は最後の数行だけ異なります。 小島剛一さんと話をするまで、私は人名を冠した日本語の文法があるなんて全然知…

小島剛一さんの新刊『再構築した日本語文法』は日本語文法の本だった

うちから『漂流するトルコ』という本を出した小島剛一さんが、今度『再構築した日本語文法』(ひつじ書房)という本を出した。なんと日本語文法の話だ。これまで学校で習った日本語の文法を、すべて新しく構築し直すという途方もない試みだ。 まだ最初のほう…

『TINY HOMES Simple Shelter』

うちでも手づくりの家の本『セルフビルド』を出しているが、これはアメリカの出版社から出ているセルフビルド本。とにかくそのバリエーションの多さ、デザインの多様さ、自由奔放ぶりは見ていて大変楽しい。タイトルにあるように、紹介されている家はちっぽ…

在庫を新装本に仕立てた西原さん

『西原理恵子の人生画力対決4』(小学館)を読んでいたら、西原さんが出した本の印税が不払いになったとあった。『この世でいちばん大事な「カネ」の話』という本で、版元は理論社だが、この会社は2010年10月に民事再生法を申請している(2011年に事業譲渡さ…

石井光太『遺体』

ようやく石井光太さんの『遺体』を読み終えた。読むのに苦労するような文体でもなく、ものすごく分厚い本というわけでもないのに、読み終えるのに2週間以上かかったのは、この本が東日本大震災のルポルタージュだからだ。タイトルの『遺体』とは、もちろん津…

困ってるひと

朝日の書評でも大々的に取り上げられ、アマゾンでもよく売れている本なので、ご存知の方も多いと思うが、高野秀行さんがプロデュースした「難病女子による、画期的エンタメ闘病記」を読んだ。なんか最近、石井光太さんのエイズ本から始まって、高野さんの腰…

一流カー・デザイナーの本

「ガラパゴス化」した日本の携帯電話は奇怪きわまるもので、「携帯電話は通話ができれば十分。それが欧州の常識でもある」と書いた記事を、以前の当欄で批判したが(2010-12-25)、結局、「通話ができれば十分」の携帯電話で世界シェアを占めていたノキアは…

石井光太『感染宣告』を読む

今度の石井光太さんの新刊は、日本のHIV感染者の物語である。当然のことながら軽いテーマではないし、正直いうと、これが石井さんの本でなかったら、果たして私は手に取ったかどうかも疑わしい。 ところが、読み始めると、これが止まらないのだ。重くつらい…

腰痛を抱えつつ『腰痛探検家』を読む

また当欄の更新が遅れてしまい申し訳ありません。前回は多忙が理由だったが、今回は腰痛が原因である。先般、高野秀行さんが新刊『腰痛探検家』(集英社文庫)を送ってくれた。すぐ読みたかったが、妻に先取りされたためにあとまわしになっていたら、なんと…

『ニッポンの海外旅行』

先日、知り合いの編集者から「新書を読んでいたら、旅行人のことが何ページも書いてあって驚いた」というメールが来た。『ニッポンの海外旅行──若者と観光メディアの50年史』(山口誠/ちくま新書)という本らしい。さっそく買い求めて読んでみた。 この本の…

石井光太さんの最新刊『レンタルチャイルド』を読む

石井光太さんの注目の新刊『レンタルチャイルド』(新潮社、本体1500円)が発売された。数日かけて読み終えたが、さて、いったいこれをどう紹介したらいいのか考えあぐねていた。もとより書評などを書こうという気はないのだが、ただの紹介にしても、この本…

食料自給率100%の嘘

今日は珍しく日本の政治について。衆議院選挙で大勝した民主党は、結局のところ右往左往するばかりで、どんどん支持率を落とし、次の参議院選挙では惨敗するんじゃないかといわれている。その元凶は「独裁」小沢であるとマスコミは言い立てているけど、一方…

『インパラの朝』

バックパッカーの旅行記がメジャーな文芸賞を受賞し、しかもよく売れている、なんてことは、ここ10年以上なかったことではないか。2009年度の「開高健ノンフィクション賞」を受賞した『インパラの朝〜ユーラシア・アフリカ大陸684日』(中村安希、集英社)を…

すっきりしないぞ『ピコラエヴィッチ紙幣』

正月に帰省したとき、本を持っていくのを忘れたので、駅の書店で『ピコラエヴィッチ紙幣〜日本人が発行したルーブル紙幣の謎』(熊谷敬太郎、ダイヤモンド社)という本を買った。アムール川の河口にあるロシア極東最大の港ニコライエフスクで、日本人商人島…

グレゴリ青山さんの田舎暮らし

グレゴリの新刊『田舎暮らしはじめました』(メディアファクトリー、998円)が発売された。以前グレゴリは東京に住んでいたが、ある日いきなり和歌山の田舎に引っ越してしまった。夫が田舎暮らしに憧れて、日本各地の田舎に格安で住める家はないかと問い合わ…

睡眠薬ボゴミール

いま、次号の製作に追われている。特集は「旧ユーゴスラヴィアを歩く」。それでバルカンの歴史をいろいろ調べているというか、まとめているところなのだが、ボスニアの歴史を読んでいたら、次のような文章が出てきた。「中世の異端ボゴミル派がボスニアに拡…