伝説の名著『トルコのもう一つの顔』

最近、トルコがアルメニアとの国交を開こうとしている。トルコがEUに加盟する条件の一つに、かつてトルコが行ったアルメニア人虐殺をどのように認めるかが問題になるが、「もしトルコが正式にアルメニア大虐殺を認めれば、アルメニアはトルコに対し謝罪や補…

『インド櫻子ひとり旅』

衆議院選挙も終わり、今日から9月である。今年も残すところ4か月だ。3日前から腰痛が発生したが、今回は比較的症状が軽くて助かった。 このたびの衆議院選挙には本当に驚いた。民主党が地滑り的な勝利をおさめた! からではなく、私の大学時代の同級生が立候…

諸行無常の生物

『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一、講談社現代新書)を読んだ。この本は65万部のベストセラーだと新聞広告に書いてあったが、私が5人にこの本の話をすると、すでに読んだ人1名、読みかけの人1名、買ったけど未読の人1名という結果で、なんと6割の人が持っ…

漫画・劇画の歴史

少し前のことになるが、漫画・劇画の歴史に関する本が相次いで出版された。手塚治虫文化賞を受賞した辰巳ヨシヒロの『劇画漂流(上下巻)』(青林工藝舎)、吾妻ひでおの『地を這う魚〜ひでおの青春日記』(角川書店)、大野茂の『サンデーとマガジン』(光…

『1Q84』重箱の隅

新聞によれば、出版業界は起業する会社が戦後最低水準になり、廃業・倒産する会社が増える一方だとか、返本率が40%をなかなか切らないまま続いていてどうにもならないとか、まったくもって暗いニュースばかりだ。書店も厳しい状況にある。「業界紙「新文化…

美しいって何?

このまえNHKで「爆笑問題のニッポンの教養」を見ていたら、グラフィックデザイナーの原研哉氏が「シンプルという美しさ」について話をしていた。私たちはごく普通に「シンプルで美しい」という表現をするが、いったいシンプルさが美しいことになったのは何故…

次号の制作終了報告とあぜんとなった本

ようやく次号の制作がほぼ終了し、今は青焼き(印刷見本のようなものですね)を待っているところである。表紙はこういう感じです。写真は、キューバ音楽のCDなども出している写真家、高橋慎一さん。 前にも書いたが、今回は巻末のキューバ旅行情報に富永さん…

現代日本の「貧困」と世界の「絶対貧困」

締め切り時刻を1時間遅れて、さっき原稿をメールで送った。「週刊現代」に掲載される予定の『絶対貧困』(石井光太、光文社)の書評である。編集者の方、原稿が遅れて申し訳ありませんでした(反省)。 やれやれと一息ついて、ふと見ると、イスの下にほっぱ…

『働く!!インド人』

私は練馬区に住んでいて、以前は会社も練馬駅の近くにあった。それで、練馬駅のすぐ近くにある南インドレストランがひいきの店になっている。これからご紹介する漫画『働く!!インド人』(流水りんこ著/朝日新聞社)は、その南インドレストラン「ケララバワ…

オベリスクはどこにある?

先日、読者から拙著『シベリア鉄道9300キロ』についての感想をいただいた。その方は宮脇俊三さんの『シベリア鉄道9400キロ』に触発されて、1990年にシベリア鉄道での旅をなさったという。私の本の中に、アジアとヨーロッパの境界に立つオベリスクのことが書…

徹夜本2

僕は競馬にはほとんど関心もなく知識もないが、そういう僕でも、例えばハイセイコーという馬は知っている。最近ではハルウララとかディープインパクトも聞いたことがある。という程度の僕が競馬の本を読み、これが徹夜をするほどおもしろかったのだから、本…

『出星前夜』で夜も眠れない

ルーマニアに行く前に買ってあったのだが、出発前は時間がなくて読めなかった飯嶋和一の新刊『出星前夜』(小学館)を、帰国してすぐに読み出した。この小説は前作『黄金旅風』から4年ぶりの新刊で、とても楽しみにしていたのだ。 ルーマニアと日本では時差…

『煙る鯨影』

クジラ問題というと、西洋人は「クジラを絶滅から救え」といい、それに対して日本人は「日本の食文化に対する冒瀆だ」などと反論する。お互いに、このままだとクジラが絶滅するぞというデータと、捕っても大丈夫だというデータを持ち合って言い争っているの…

ざかざんざかざんの山松ゆうきちがインドへ

山松ゆうきちという漫画家がいる。『くそばばの詩』などの作品で知られるが、かなりマイナーな漫画家だ。僕が大学生の頃は、漫研内ではそれなりに評価があった人で、雨の描写に「ざかざんざかざん」という擬音を書き入れたことがバカウケした。一風変わった…

数学者のビューティフル・マインド

NHKの番組『100年の難問はなぜ解けたのか』や映画「ビューティフル・マインド」を見ると、天才的な数学者というのは、凡人にはまったく理解できないものだとつくづく思う。凡人が理解できないからこそ天才なのだが、そもそも数学者という人々の感じ方もよく…

ノンフィクションを読もう

めっきり寒くなってきましたが、みなさまお元気ですか。もう12月も中旬になってしまいました。 ずいぶん前のことだが、テレビで内沢旬子さんが出ている番組をやっていた。それを見て、モノカキというのはつくづく大変だなと思った。内沢旬子さんは、先般『世…

私のミシュラン

掲示板のトラブルで書き込みできなくなっている方が多いと思いますが、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。システムが古くて、なかなか対策が立てにくい状況ですが、サイトそのものの一新を含めて、新しいシステムへの改変も考えています。もう少し、…

ミシュランガイドを引用するな?

ようやく次号「グジャラート特集」の制作が終わり、きのう印刷所に入稿した。疲れた。年2回発行になる初めての号だというのに、いろいろあって製作期間がいつもより短くなって、最後は1時間以上、印刷屋さんを事務所で待たせての入稿となった。こういう場合…

中沢新一先生の妄想『アースダイバー』

友人から「おもしろいよ」といわれて、これまでまったく読んだことのなかった中沢新一の本を読んだ。『アースダイバー』(講談社/1800円)という本である。これが実によく売れているらしく、僕が買った本も、14刷になっている。さらに、この本は桑原武夫賞…

『神の棄てた裸体』を読む

『物乞う仏陀』(文藝春秋/1500円)の石井光太さんが新刊『神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く』(新潮社/1500円)を出した。さっそく拝読。前回同様にウルトラヘビーなテーマでありながらも、読み始めるととまらないノンストップ・ノンフィクションであ…

『怪獣記』と『新・UFO入門』+追記

ご存知、高野秀行さんが新刊『怪獣記』(講談社/1500円)を出した。けっこう評判になっているようなので、ご存知の方も多いと思うが、遅ればせながら私も拝読した。高野ファンには期待を裏切らない一冊である。 例によって、トルコのワン湖に棲息するといわ…

最近読んだ漫画

先日、田中真知さんと話をしていたら、最近農業関係の原稿を書いたという。なんで真知さんが農業のことを書くんですかと聞くと、農業そのものではなく、農業に関係のある漫画について書いたらしい。それで紹介してくれたのが『もやしもん』(石川雅之/講談…

今年見た写真集

いよいよ今年も残り少なくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。また当欄の更新が遅れてすいません。今年も1年たつのが早かったねえ。ホントに年々早くなっていく。 今何をやっているかというと、もちろん来年早々の1月25日発売の次号「エチオピア特…

「りぼん」の時代

先日、図書館に行ったときに、偶然棚にあった文庫『『りぼん』のふろくと乙女ちっくの時代―たそがれ時にみつけたもの』(大塚英志/ちくま文庫)が目にとまった。単行本が1991年に出版され、1995年に文庫化されたようだが、ぜんぜん知らなかった。 なんでこ…

世界飛び地大全

『国マニア』の吉田一郎さんが、はやくも第2弾『世界飛び地大全 不思議な国境線の舞台裏』(社会評論社/本体2400円)を出した。今度の本もすごいよ。もともと吉田さんは飛び地研究家だそうなので、今度の本の方が本命なのかもしれない。 一応世界には飛び地…

最近読んだインドの本

──過酷な労働や人間関係のこじれなどからくるストレスに悩まされている者が多い。彼らは高収入を維持するためにも、次々と与えられる仕事をこなさなければならない。朝早くから渋滞の中を通勤し、会社では対人関係や書類の整理で疲れ、夜遅くに帰宅する。/…

『国マニア』がおもしろい!

ようやく次号の制作が終わったと一息ついていたら、当欄がぜんぜん更新されていなかった。ヤクルトの古田選手ぐらいになるとブログが更新されないだけでニュースになっているが、実に気の毒なことである。忙しくてブログなんか書いている場合じゃないだろう…

『自衛隊に入ろう』は放送禁止歌なのか?

ちょっと遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。年賀状をたくさんいただき、大変ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。 今年の寒さは尋常ではなく、どこが温暖化なのだ! と言いたくなるほどでしたが、昨日の新聞を見ると、イ…

気の重い話

このまえ「ナショナル・ジオグラフィックス」の最新号が届いて、前にロビンソン・クルーソーの記事のことを書いてから、もう一カ月がたったのかとあっけにとられている。早すぎる!(年寄り臭い発言ですまぬ) その「ナショジオ」だが、今回(11月号)では、…

ロビンソン・クルーソーを探して

子どもの頃、デフォーの『ロビンソン・クルーソー漂流記』を読んだことのある方は多いことだろう。僕も読んだ(筈だ)。しかし、まさかロビンソン・クルーソーが実在の人物だとは思っていなかった。 僕がロビンソン・クルーソーに実在のモデルがいることを知…