在庫を新装本に仕立てた西原さん

 『西原理恵子人生画力対決4』(小学館)を読んでいたら、西原さんが出した本の印税が不払いになったとあった。『この世でいちばん大事な「カネ」の話』という本で、版元は理論社だが、この会社は2010年10月に民事再生法を申請している(2011年に事業譲渡され、現在は新「理論社」が運営している)。

 版元が倒産同然になって印税が支払われないというのは間々ある話だが、西原さんのような売れっ子の場合はそのスケールが違う。未払い印税2000万円! く〜、すさまじい。入る予定の金が2000万円もパーになったら、普通の人なら人生転落だよ。

 しかし、西原さんは(たぶん)お金持ちなので、その程度の金でひるむようなことはないのだろうが、在庫8万部が廃棄処分になろうとしていることに憤る。それで、旧理論社から業務を引き継いだ新理論社に交渉して、その在庫を受け取ることに。そして、その在庫を別の出版社からあらためて出し直したのだ。その際、旧本が税込1365円だったのを、新装版では790円に値下げしている。

 Wikiにも説明があり、これによれば「西原は、印税が未払いになっている作品の在庫が無料で引き取れることを利用して、理論社にある本作の在庫5万冊(と西原の別作品の在庫3万冊)を別の出版社に引き取らせて販売しようとしたが、理論社からストップが掛けられた。」とある。

 それで新しい版元はユーメイドという出版社だ。私は在庫を別の出版社から出す過程がすごく不思議だったので、この本を買ってみた。何が不思議かというと、理論社から出した本には、カバー、表紙、奥付、または前扉など、すべてに理論社という社名が入っている。カバーだけなら刷り直して取り替えるのにたいしたコストはかからないが、表紙や奥付をすべて取り替えるとなると、すごいコストがかかるはずだ。しかも、値下げして販売するわけだから、いったいどう処理したのだろうと思ったのだ。

 届いた新装版を見てみたら、見事に理論社の名前が消え、前扉も奥付も全部入れ替えてあった。カバーはなく、表紙が4色印刷で、そこに帯がかけてある。ということは、本体に糊付けしてある表紙を見返しの紙とともにひっぺがし、最初の前扉と最終ページの奥付を切り取り、新しい前扉&奥付を糊付けした上に、新しい見返し+表紙を貼り付けたことになる。うーん、こんな手間ひまかかることを5万部もやったのだろうか。それで値下げして売れるのか?

 刷り直した方がコストが安い気がするが、しかし5万部ともなると、刷り直すコストの方が高くなるのかもしれない。そもそも在庫を廃棄するのが嫌でこういう方法をとったのだから、一概にコストの問題だけでもないのだろう。よく見ると、もくじの第1ページ目のノンブルが009になっていて、実際のページ数と合っていないので、やはり改造した新装本であることがわかる。すごい!

この世でいちばん大事な「カネ」の話(新装版)

この世でいちばん大事な「カネ」の話(新装版)