竹宮惠子のバックパッカー旅行。その2

のっけから訂正です。 前回書いた竹宮と増山の会話で、増山が「知ってるわよ、それくらい! 小澤征爾だってそういうので武者修行に行ったのよ!」といったと竹宮は書いたが、前川さんから指摘があり、小澤征爾はシベリア鉄道に乗っていなかった。1959年、神…

竹宮惠子のバックパッカー旅行。その1

ブログの「萩尾望都はバックパッカーだった」を読んだ人から、Twitterで竹宮惠子の『少年の名はジルベール』(小学館)にも、彼女たちのヨーロッパ旅行について書かれていますよと教えていただいた。さっそく図書館でその本を借りてきた。 萩尾望都の『一度…

宮田珠己さんの新境地『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』

アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険 作者:宮田珠己 大福書林 Amazon 14世紀、ジョン・マンデヴィルというイングランド人の旅行家がいた。中東、インド、中国、ジャワ島、スマトラ島を旅して『東方旅行記(マンデヴィル旅行記)』を発表し、ヨーロッパで多…

萩尾望都はバックパッカーだった。その3

『一度きりの大泉の話』の最終回です。 1972年、彼女たちは無事に44日間のヨーロッパ旅行を完遂した。萩尾望都はこう書いている。 「名所旧跡などへはあまり行かず、(私は名所旧跡の知識もなかったので)日本と違う風景や異国の街や異国の乗り物や人々を見…

萩尾望都はバックパッカーだった。その2

1972年、萩尾望都(当時23歳)、竹宮惠子(同22歳)、山岸凉子(同25歳)がシベリア鉄道に乗ってヨーロッパへ旅した時代は、まさに海外旅行など高嶺の花。このあたりの事情は前川健一さんの専門分野なので、氏の『異国憧憬ー戦後海外旅行外史』(JTB)から引…

萩尾望都はバックパッカーだった。その1

長文になりそうなので、ひさしぶりにブログで書くことにした。 少し前に話題になった萩尾望都『一度きりの大泉の話』を読んだ。これを読むまで、萩尾望都と竹宮惠子が不仲だということをぜんぜん知らなかった。そもそも萩尾望都と竹宮惠子が不仲だろうが仲が…

『蓑虫放浪』を読む

江戸末期の1836年、岐阜に生まれ、明治中期まで日本各地を放浪しながら絵を描いた仙人のような男がいた。土岐源吾という名前だが、人々には「蓑虫山人」と呼ばれた。その蓑虫山人の足跡を日本各地にたどって、彼の姿を浮き彫りにしたのが本書だ。 なぜ蓑虫な…

『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』(佐藤大介、角川新書)を読む

トイレからインドの現状を見るという面白い着想で書かれた新書。インドにはトイレが少なく、農村では屋外で排泄している人が圧倒的に多い。モディ首相はこれを改善すべく、「クリーン・インディア」運動を繰り広げ、インド全土にトイレを設置して、これでイ…

前川健一『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』を読む

小林真樹さんの『食べ歩くインド』の制作・発送がようやく一段落し、長い間手を付けられなかった本の紹介や他の仕事をぼちぼち始めようとしている。ほんとは何もせずにしばらく休みたいところなんだけど、日程上すぐに休んでいられない。 さて、ひさびさに出…

タンドゥーリー・チキンはインドの伝統料理ではなかったーー『食から描くインド』を読む

アジアハンター小林さんのインド料理の本を制作している関係もあって、インドの食に関する本を読んでいる。この連休に読んだのが『食から描くインド』(井坂理穂・山根聡編/春風社)。けっこう高くて固い本なのに、数か月で2刷りになっているのに驚いた。 …

もしもハザリバーグが観光地になったら

先日、アフガニスタンで中村哲さんがお亡くなりになるという不幸な事件があって、今年の印象はまったくよろしくないが、そのうえ友人がネパールで客死するという悲しい話が舞い込んできた。その前日までフェイスブックでやりとりをしていたのに、悲劇は一瞬…

『チョンキンマンションのボスは知っている』を読む

香港のチョンキンマンションを根城にして商売するタンザニア人を調査した文化人類学者のエッセイ。タンザニア人たちがどのようにして商売し、どのような集団関係にあるのかを、彼らと長年ともにして解き明かしていったのが本書だが、論文は別にあって、こち…

ミュージシャンのサクセスストーリー映画『ガリー・ボーイ』

インド、ムンバイのスラム街の青年がラップミュージックに目覚め、やがてコンテストに優勝して成長していくストーリーは、アメリカ映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』とほとんど同じといっていい。『ストレイト・アウタ・コンプトン』は実在の人気ラッ…

場末感漂う成田空港第3ターミナル

今回初めて成田空港第3ターミナルを使用した。2015年4月に開業したそうだが、いやびっくりしましたねえ。何がって、その場末感いっぱいな雰囲気に。これが天下の成田空港のターミナルなの?って感じ。 LCC専用ターミナルだからこんなもんでいいんじゃないの?…

アジアハンター小林真樹『日本の中のインド亜大陸食紀行』(阿佐ヶ谷書院)を読む

希有な本が小さな出版社から刊行された。日本でインド亜大陸の食文化を追求しようという本だ。それだけ書くと、日本にあるインドレストランのガイドブックかと思ってしまうが、この本に書かれているのは、一般的なレストランに加え、普通の日本人ではまず発…

北澤豊雄『ダリエン地峡決死行』を読む

旅行者の間でよく知られる国境の難所がある。なかでも最も渡るのが難しいとされるのが、パナマとコロンビアの国境だ。国境地帯はジャングルで、もちろん交通機関はなく、猛獣もいれば武装ゲリラもいる。ここを陸路で渡ろうとする普通の旅行者はまずいないの…

インド先住民アートの村へ~ハザリバーグ画について

去年の11月にインドのジャールカンド州へ先住民の家の土壁に描かれた絵を見にいって、今年の2月から3回、それについてのトークイベントや展示会を重ねてきた。次の5月18日に福岡アジア美術館でトークイベントをやり、5月24~26日に早稲田奉仕園でシリーズ最…

『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』

『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』というドキュメント映画を観てきた。 ユーリー・ノルシュテインはファンの方には言わずと知れたロシアアニメーション界の巨匠だが、そのノルシュテインが取り組んでいるのがゴーゴリの名作『外套』のアニメ化だ…

インドでスマホを使う

旅の準備でデジタル機器について書いたので、今回はその結果をご報告したい。 インドに着いて、すぐにSIMカードを購入した。Vodafonのカードでインド全国をカバーする。28日間有効で、データ通信は1日1GB、会話は無制限で600ルピー(約1000円)だからかなり…

ジャールカンドへ壁画を探しに

今回旅したのは、インドのジャールカンド州だ。そういっても、有名な観光地など何一つなく、ガイドブックにもまったく情報がないので、ほとんどの人はどこだかわからないだろうが、インド北部のビハール州から2000年に独立した比較的新しい州である。 なぜこ…

旅の準備

ひさしぶりに旅に出るので、ここ数日はその準備に追われていた。そんなにたいしたことじゃないんだけど、カメラ、コンピュータ、スマホなどのセッティングが慣れていないのでちょっと厄介だった。 まずカメラ。 新しく買ったコンパクトカメラがあって(前の…

『ガンジスに還る』

17:44 試写の案内が来てタイトルを見たとき、深刻で重そうな映画かなと思って試写室に足を運んだ。たぶんバラナシで死を迎え、ガンジス川に遺灰が流されていく宗教的なテーマの映画かも、とかなんとか思いつつ映画を見始めたのだが、これはいい方に見当外れ…

ポジフィルムのデジタル化に挑む(2)

レンズの前にスライドアダプターを装着 買いそろえたマクロレンズとスライドアダプターをカメラに装着し、いよいよ撮影を開始する。今度はちゃんとピントが合って、ファインダーにはっきりと画像が見える。よしよし。 普通はオートモードにしてシャッターを…

ポジフィルムのデジタル化に挑む(1)

ヒマを見ては、せっせと古いポジフィルムをスキャンしていた。うちにあるのはフラットベッドのスキャナーで、普段は紙類をスキャンする機械だが、アダプターを使えば一応ポジもスキャンできる。これまではこれでやっていたのだが、スキャンに非常に時間がか…

蔵前仁一インドトーク インド先住民アートの村へ

ひさしぶりの関西巡業で京都へ参ります。 インドの田舎の村々へ、先住民アーディバシーの壁画を求めて旅をした様子と、そのときに撮影したレアな壁画やペインティングの数々をご紹介いたします。ミティラー画、ピトラ画、ミーナー画、ワルリー画、ゴンド画な…

新刊『テキトーだって旅に出られる!』

去年から書いていた本が、ようやく4月25日の発売までこぎ着けた。ほぼ書き下ろしだが、以前雑誌に書いた原稿を引っ張り出して、大幅に修正や加筆を加えたパートもある。 産業編集センターという出版社から執筆の依頼を受けたのだが、注文は「旅に出たくなる…

世界を変える美しい本

2017年もいよいよ押し詰まってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 今年は「ゴーゴー・インド30年」イベントのせいで、例年になく忙しい一年だった。考えてみれば、今年はどこにも海外旅行に行かなかったが、それを感じさせないぐらい気忙しい年だっ…

インドのカレーは辛いのか?

FACEBOOKやツイッターで「インドを旅した方で、インドのカレーは辛かったですか?」という質問をしました。ご協力くださった方が、ありがとうございました。 なぜ唐突にこんな質問をしたかというと、今、来年出す予定のエッセイを書いているところで、インド…

ゴーゴー・インド30年のイベントを終えて(2)物販部門

会場費+運営費のメドは立ったが、利益が出るのは物販にかかっている。そういうわけで、半年間、僕は一心不乱にグッズおよび本をつくりつづけた。一応グラフィックデザイナーである僕は、本や雑誌のデザインはいつもやっているが、トートバッグやTシャツのデ…

ゴーゴー・インド30年のイベントを終えて(1)会場の問題

今年の3月頃だったか、「『ゴーゴー・インド』が出てからちょうど30年になるから、なにか記念イベントを開きましょうよ」と前原利行さんに提案された。いまどき前原と聞けば民進党の党首だが、利行さんのほうは「旅行人ノート」や「地球の歩き方」などを手が…