ポジフィルムのデジタル化に挑む(2)



レンズの前にスライドアダプターを装着


 買いそろえたマクロレンズとスライドアダプターをカメラに装着し、いよいよ撮影を開始する。今度はちゃんとピントが合って、ファインダーにはっきりと画像が見える。よしよし。
 普通はオートモードにしてシャッターを押すだけだ。試しにそれで撮影する。
 これがその結果。ぜんぜん写り具合が違う。2万6590円を投じた甲斐があった!


左がスキャナーでスキャンした画像、右がカメラの複写


 で、ここからがまた問題。一筋縄ではいきません。
 日頃はまったく気にしたことはないが、カメラにはホワイトバランスというものがある。有賀さんによれば、これをスライドの撮影のために最適化しなければならないらしい。そもそもホワイトバランスとは何か、何のためにやるのかも知らない僕にとって、こんなこともいちいち調べなくてはならないのだ。なんでオートじゃダメなんだ。ホワイトバランスとは、「さまざまな色あいの光源のもとで、望んだ色調の写真を得るための補正のこと」(Wiki)だそうです。

 カメラのスイッチをいじってみると、確かにありますね、ホワイトバランスというのが。何種類かあって、晴天、曇り空、蛍光灯と、光源によって変えるものらしい。試しに各モードで撮影してみた。


どのモードがどの写真なのか忘れたが、色合いはモードによって変わるようだ


 おお、確かに色の出具合が違う。元の色に近いものを選べばいいのかと思ったら、そうではなくて、撮影時の光源で計測して適切値を設定するらしい。有賀さんは、その光源としてLEDのライトを勧めてくれたが、ケチな僕はまた買い足すのがいやで、太陽の光じゃダメなんですかと聞くと、太陽の光でもいいけれど、太陽光は時間によって光量も色も変化するという。そりゃそうだ。時間によっていちいちホワイトバランスを設定し直さなくてはならないのはかえって面倒くさい。
 というわけで、おすすめのLEDライトを追加購入。2500円なり。


 で、このライトを設置する小さな三脚も必要だという。
 うーん、また買うのはいやだなあ。それじゃ今持ってる大きな三脚にLEDライトを付けて、カメラは手持ちで撮影すればいいのではないかと勝手に判断し、それでやってみる。
 だが、さすがプロのいうことに無駄はなかった。
 数枚撮影して、それではダメだということがすぐにわかった。手持ちのカメラをLEDライトに向けて撮影すると、ライトとレンズの距離や角度が一定しない。写すたびにちょっと近くなったり遠くなったりするわけだ。もちろん角度も変わる。光の入射角が変わるので、光量も変化する。これではせっかく測定したホワイトバランスが無効になってしまうのだ。
 やっぱりもうひとつ三脚が必要だ。
 ここまできて、そういえば昔980円で買ったコンパクトデジカメ用のちゃちな三脚があったのを思いだし、それを探し出した。おお、あったあった。それにLEDライトをねじこんだら、プラスチックの部品がぱかんと外れた。
 それでまた思い出した。そうだ、これってここが外れるので使うのをやめたんだった。やっぱり安物だよなあ。
 しかし、そこを接着剤でひっつけて強引に使用する。とにかくライトを固定できればいいのだから、これで十分だろう。
 というわけで、ようやく本格的な撮影にこぎつけることができたのだった。


 ここまで僕にとっては大変な道のりだったが、有賀さんの適切なアドバイスのおかげでなんとか設定できた。さあ、撮影だ! というところで、また問題が。ポジフィルムにゴミがいっぱいひっついていて、これが映り込んでしまうのだ。
 実はこの問題は、スキャナーでやっていたときからわかっていたことで、古いポジにはホコリやゴミや、ひどいものになるとカビまで生えている。これをどうしたら除去できるかが問題だった。
 最初はフィルムを洗うことを考えた。ネットで調べると、できることはできるが、素人がやるにはけっこうリスクが大きい。ポジの色が落ちてしまう危険が高い。それにかなり面倒くさい。もちろん金を出して業者に頼むこともできるが、金は出したくないので論外である。
 Facebookで、これはどうですかとアドバイスしてくれた人がいて、それはプラモデル用の静電気防止ブラシだった。

 ただのブラシではない。「静電気を取り除いてホコリなどの再付着を防ぐ除電ブラシと、彫刻線などの細い溝のクリーニングに便利なミニブラシを装備」という優れもので、ブラシにしては1286円もする高級品だ。
 洗浄がいやならとにかくやってみるしかない。ということで、これを購入してやってみた。その結果がこれ。


小さな画像ではちょっとわかりにくいが、左が掃除前の画像で細かいホコリが付いている。画像左上の点はカビなのでブラシでは取れない。画像をクリックしてオリジナル画像で見ると、ゴミの取れ具合がよくわかります


 見事にホコリが除去されている。すばらしい!
 さすがにこれでカビは除去できないが、そこまで劣化したポジはほとんどないので、もしカビがある場合は、Photoshopの修正ツールで加工する。どの画像も印刷に使用する場合は、最終的にPhotoshopで修正をかけるのだが(どうしても微細なゴミは残るので)、ゴミの大きさと量によって修正時間が大幅に変わる。元データは一見するとゴミのない画像でないとあとが大変なのだ。印刷しないのならPhotoshopによる修正は必要ない。
 というわけで、ここまで大変だったけれど、ゴミも取れ、撮影が始まると、スキャナーと違って、バシャバシャとどんどん複写できる。スキャナーだと4、5時間かけてやってもせいぜい50〜80枚だったが(それ以上スキャナーを動かすと過熱で動作がおかしくなる)、カメラでやれば1時間でそれぐらいは軽く複写できる。とにかくいったん設備を整えるまでが辛抱ということですね。
 ここまでの費用は、
 NEEWER CN-160 LED ビデオライト 2500円
 モデルクリーニングブラシ 1286円
 前回分 2万6590円 合計3万376円

 100枚以下のスキャンならこういうことはしなかったと思うが、500〜1000枚、あるいはそれ以上のスキャンが必要なので、あえてやった。1000枚やれば1枚あたりのコストは30円ですむ(ライトの電池代除く)。

 最後に、有賀さんのアドバイスを書き添えておく。
 1)ホワイトバランスはAUTOではなくマニュアル取得
 2)感度はISO100
 3)絞りF10
 4)クリエイティブスタイルはニュートラルがいいと思います。試し撮りして比較して決めて下さい。決める際はカメラの液晶モニタではなくパソコンの画面で見て。


 有賀さんのお名前を出して書いてきたが、素人の判断でやったこともあり、有賀さんの言葉を正確に理解できているとはいいがたい。間違っていることを書いている場合は、有賀さんではなく僕のせいです。みなさんも間違いながら自分の方法を確立していこう!