軽キャンの元祖を訪ねる

 7月下旬から4週間弱、四国、中国、九州をまわってきた。今回はおもしろいところにいったので、その話をSNSに書こうと思ったんだけど、長くなりそうなのでブログにした。

 

 今、キャンピングカーがブームになっている。道の駅でもキャンピングカーが停まっていないところはないほどだ。そのなかでいかにも日本的なのが軽自動車を改造したキャンピングカー(略して軽キャン)だ。軽自動車のような小さな車がキャンピングカーになるのか? と思うが、立派なキャンピングカーになり、維持費も安いこともあって大人気だ。

 

 僕が知る限り、その軽キャンを最初に作り、世の中に広めたのが「テント虫」だ(まちがっているかもしれません)。軽トラックの荷台部分に居住スペースを積んだテント虫は、軽トラとは思えないほど充実した装備になっている。写真で見る方が早いので、こちらからご覧下さい。

https://www.vs-mikami.com/tentmushi/

 

 このテント虫を製造販売しているのが、バンショップ・ミカミという会社で、鹿児島のすごい田舎にある。鹿児島県曽於郡財部町と聞いて場所がわかることはおろか、読み方さえわかる人は地元民だけだろう。「そおぐん・たからべちょう」と読む。僕が読み方を知っているのは、もちろんこのそばで生まれ育ったからだ。

 

 今回の旅で、この付近を通ることになって、それならちょっとテント虫を見せてもらおうと思って立ち寄ってみた。言っちゃ悪いが、ここらへんはド田舎と呼ぶにふさわしい。周囲はぱらぱらと家があって、その他には田畑しかない。そこに、日本で屈指の軽キャンビルダーがあるのだ。

 

 どういう会社かと思って期待して行ったら、ただの小さな町工場だった(すみません!)。キャンピングカーに興味がある人で、テント虫の名前を知らない人はまずいない。業界でも屈指の有名ビルダーなのに、本社社屋はこれだ。工場は屋根を架けただけのスペース。ここであの憧れのテント虫を製造しているのか!

バンショップミカミの全貌

 テント虫を見せていただけますかとお願いすると、社員の方が快く車を見せて下さった。初めて実車を見たが、想像していた通り中は広く、実によくできている。人気があるはずだ。工場では3、4台のキャンピングカーが製造されている。

工場で製造中のキャンピングカー。右側の銀色の車体は多分Dテント虫で普通車ベース。

「これ、今注文すると、納期はどれぐらいですか?」

 僕がそう聞くと、言いにくそうにこういった。

「そうですねえ、う~ん、2年半から3年というところですかねえ」

「さ、3年? 3年もかかるんですか! それじゃ1か月に何台製造なさっているんですか?」

 これもかなりいいにくそうに、「う~ん、まあ3台ぐらいですかねえ。今はベース車も入荷しづらくなってまして」

 たった3台! まさに今この工場で作っているこれがすべてということか。わかりやすいといえばじつにわかりやすい。3年で作れるのはたった108台。つまり100人あまりのバックオーダーを抱えているというわけだ。

「3年かかるとなると、その間にモデルチェンジしちゃうんじゃないですか?」

「そうなんですよ。それが悩みの種です」

 

 日本で販売されている日本製のキャンピングカーはすべて手造りされている。つまり、内外装する部品で大量生産されているものはネジ釘のようなものだけで、ほとんどすべてのパーツは一個一個手造りしなければならない。だから1台作り上げるのにかなり時間がかかる。他のキャンピングカービルダーでも1〜2年待つのは当たり前という状態だ。新車を注文して2年も3年もかかるのでは待っていられない。だから、キャンピングカーは中古車もかなりの高値で販売されている。

 

 それにしても、一か月でたった3台で商売になるのか? 余計なお世話だが、鹿児島のド田舎なら土地も安いし、屋根を架けるだけの工場ならたいした建設費はかからないから、設備投資して増産したらいいのにと素人は思うが、ジムニーだってあんなに人気があって納期1年以上というのに、今より増産はしないそうだから、これこそが慎重経営、長生きの秘訣なのかもとは思うが、せめて10台ぐらい作ろうよ~。