『アジアにこぼれた涙』と年末のご挨拶

 本年もいよいよ押し詰まってきた。今年は本当に大事件が多く、暗い話題の多い年だったが、来年は少しはよくなるのだろうか。

 さて、私は今、来年1月に刊行する新刊『アジアにこぼれた涙』を制作中である。もちろん著者は石井光太さんだ。本誌連載のものに書き下ろしを加え、未発表写真を大幅に入れ、半ば写真集のような構成になっている。発売は1月31日。よろしくお願いします。カバーはこういうデザインです。

 当欄でもたびたび書いてきたように、多くの読者から休刊を惜しむ声をいただき、そして最終号のみならずたくさんのバックナンバーまでお買い上げいただいた。本当に感謝にたえません。心から御礼申し上げます。

 今日も、ある古い読者から手紙をいただいた。その人は今ロンドンに住んでいらっしゃるのだが、日本に住んでいるときはグラフィックデザイナーだった。長旅を夢見ながらボロボロになって仕事を続けたものの、3年が限界で、ついに1年の旅に出たという。そのときから遊星通信を読んでくださっていた。20年あまり読んでくださったことになる。

 私もグラフィックデザイナーとして雑誌の仕事をやっていたので、3年が限界というのはよく理解できる。不眠不休で仕事をこなし、結局私も3年しかもたなかった。あのときはずいぶん長く感じたが、あとで考えるとたった3年だったことに愕然となった。もし、あのとき、たまたまインドに行かなかったら、私はそのまま仕事を続けていたのだろうかと、よく思う。

 田中真知さんが以前ブログで書いていたように、だいたいのことは「たまたま」そうなったからだろうと私も思う。そう思うと心が安らぐ。旅行人も、私がたまたま大学オタクの父親から生まれたせいで東京の大学に入学し、たまたま漫研に入部し、たまたまグラフィックデザインに興味を持ち、たまたその仕事が忙しくなり、たまたまデザイナー仲間がインドに旅することを勧めてくれ、小川京子のクルマを売った金で、たまたまコンピューターを買ったせいでできたといえなくもない。いくつもの偶然が重なって、イラストやデザインや旅の経験が旅行人に向かって結集したというわけだ。世の中ってのはおもしろいもんですね。

 今年も当欄をお読み下さってありがとうございました。今年のブログ更新回数は(お知らせを除き)なんとか50回を越えた。今年もノルマが果たせてよかったです。来年もよろしくお願いします。どうぞよい新年をお迎え下さいますように。これまで本誌をお読み下さって本当にありがとうございました。