ベン・シャーンの線
正月に静岡に帰省した帰りに、神奈川県立近代美術館葉山で行われていたベン・シャーン展を見に行った。個人的なことだが、大学の漫研時代、ベン・シャーンは、トミー・アンゲラーと並ぶスーパースターで、一部の漫研部員の画風に大きな影響を与えた。私もその一人だ。もっともその頃にはベン・シャーンは故人だったが(1969年死去)、私の大学時代といえば死後まだ6年しか経っていなかったから、その余韻が強く残っていたのだろう。
日本のグラフィック・デザイナーやイラストレーターにも、ベン・シャーンを崇敬し、影響を受けた人は多い。著名なところでは山藤章二さんがそうだ。彼の似顔絵の線、手の組み方などにベン・シャーンの影響が強く見て取れる。和田誠さんも、安西水丸さんも影響を受けたといわれている。
上がベン・シャーンで、下が山藤章二さん。線の感じが似ていますね。
ベン・シャーンはリトアニアで生まれ、アメリカに移住した。貧困家庭で育ち、社会の底辺で働く人々に強い共感を持っていた。作品に、戦争、貧困、差別などがテーマとなったのも、そのような生い立ちがあったからだといわれている。
ペン画、リトグラフ、写真など多彩な技法を駆使したベン・シャーンだが、展覧会では、労働者のための政治運動ポスターなどが展示されていた。私は政治運動のポスターなどはあまり好きではないが、ベン・シャーンのそれはさすがにデザイン的にも絵としても完成度が違う。日本のグラフィック・デザイナーが影響を受けたのもよく理解できる。
後年になるにしたがって、ベン・シャーンは政治的なメッセージ性から離れ、造形美を追究するようになったらしい。個人的にはベン・シャーンの研ぎ澄まされた一本の線を味わえるシンプルなペン画が好きだ。
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