地図の校正

 またもや更新をサボっていたら、「アジア雑語林」の前川さんから(たぶん)早く更新しろという意味をこめて指示が出たので、地図の校正などについて少し書いてみよう。

 まず、ホテルの電話番号は安宿ばかりなので掲載してこなかったが、稀に載せる中級〜高級ホテルはホテルのサイトでチェックしている。

 地図の校正は、前川さんも書いているように、グーグル・マップができる前と後とではずいぶんやり方が変わった。「旅行人ノート」の地図を製作していた頃は、まだグーグルマップがなかったので、現地で市販されている地図で確認していたが、現地の地図も実は信頼できないことが多かった。

「旅行人ノート」の地図で富永省三さんが制作しているものは、文字校正以外の校正はほとんどなし。富永さんの制作した詳細な地図は、それ以上詳しい情報など入手できないので、校正しようがないのだ。それ以外でも、うちで掲載しているところはマイナーなところが多いので、市販されている地図もあまりなかったし、校正できないものの方が多かった気がする。

 しかし、今やグーグル・マップのおかげで、地球上の多くの部分を航空写真で確認できるようになり、あれやこれやとチェックしている(しなければならなくなったともいえる)。今回の『中国鉄道大全』でも、かなり中国各地をグーグルで見てまわった。撫順の炭鉱を初めて見てみたが、すごい迫力だ(しかし大部分はモヤをかけて隠しているように見える)。

 地図に対する感覚は人によってずいぶん異なる。私はガイドブックを作っていたし、富永さんから地図に対してかなり細かな指示を受けながら制作して鍛えられたので、地図のスケールや方向には神経を使う。だが、一般的に、地図を作ったことのない人は、こういうことに対してあまり注意を払わない。ある本で、著者に地図の原図を出してくれと頼んだら、真っ白な紙に、ただA地点からB地点へまっすぐに矢印が引かれているものを渡されてあぜんとなったことがある。地図という感覚がわからないのだろう。

 おそらく地図が好きだという人以外は、地図を作る行為は難しいと思う。私も旅先で何度も試みたことがあるができなかった。できる人には簡単なことも、私には不可能だ。道が南北に延びているから、東西に延びている道とある地点で交わるはずなのに、そこに行くとそうなっておらず、私の感覚とは別のところで交差している、ということが多い。そうなると、その道路沿いにあるホテルやレストランの位置もまったくつじつまが合わなくなって、地図作りは頓挫する。

 ところが、グーグルマップ(あるいはBing Mapやヤフーマップ)ができて以来、かなりの町が画面に地図で現れてくるので、中国でもアメリカでも、鉄道の駅名から路線名まで、ほぼすべての名称と位置をチェックできるようになった。大変といえば大変だが、地図で確認できる部分についての間違いはぐっと少なくなったはずであり、編集部としても安心できる。

 ただネットの地図が万能というわけではもちろんない。例えばグーグルマップの場合、グルジアをご覧下さい。何も出てきません、と書いてチェックしたら、あら、出てくるようになってますね。ついこの前までは、グルジアはほとんど何も出てこなかったのだが、日々進歩してますねえ。しかし、やはり山間部はほとんど使い物にならない。国や地域によって、おもに田舎の地図が粗くなるのはいたしかたないことなのだろう。

 しかし、ここまでくると、ガイドブックを紙に印刷する意味はもうほとんどない気がしますね。メジャーなところは紙に印刷しても部数が出るから採算が合うだろうが、年間数百人しか行かないようなマイナーなところは、ネットに情報をアップした方が合理的だ。もちろん問題は情報の精度だが、正確な情報を得るには予算がかかるわけで、マイナーな場所だと余計に難しいということになる。ま、それもしょうがないかな。自分で道を切り開くしかないですね。