旅行人本誌の休刊について

 そろそろ次号がお手元に届き、休刊のお知らせをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。掲示板にも書きましたが、本誌は165号で休刊します。といっても、1年に2回しか出ない雑誌ですので、実際に休刊になるのはまだ1年半もあとのことです。

 こんなに早くから休刊を告知する雑誌も珍しいのではないかと思いますが、うちの場合、広告を気にするわけでもないので、休刊の予定を早々と申し上げることにしました。内々に休刊が決まっているのに、新しく定期購読を受け続けるのは失礼ですし、休刊後の手続きがより面倒になるからでもあります。

 休刊になる理由はすでに本誌にも書きましたが、若いときほど無理がきかなくなって、仕事量を減らさないとやっていけないのが大きな理由です。老いは誰にでも訪れることなのでしょうがない。いずれはやめなくてはならないわけで、そのときがいよいよやってきたというわけです。

 後継者はいないのかという質問をされたことがありますが、いないのです。何故いないかというと、以前にも申し上げましたが、旅行人はウルトラマイナーな雑誌で、部数も少なく、広告もなく、編集長である私がある意味で好き勝手に作っている雑誌です。メジャーな雑誌が取り上げるようなメジャーな観光地を無視し、パブ記事を拒否し、執筆者に安い原稿料で書いていただいている雑誌ですので、当然ながらお金は儲かりません。だから、取材から執筆、編集、レイアウト、はては発送作業まで、たった3人でこなさなくてはならないのですが、私のあとを継ぐ人に、執筆もレイアウトも編集も一人でやれとは普通いえませんね。編集者、デザイナー、執筆者と全部分業にしたら(それが普通です)、会社は赤字で成立しません。だから、私がやめるというと終わっちゃうんです。私の体力勝負というのはそういう意味です。

 そもそも私は、好んで何もかもやっています。つまり、取材をし、執筆し、編集し、レイアウトして印刷所に渡すという一連の制作作業を、最初から最後まで私自身がやることが楽しいし、喜びなのです。だから、こういう作業を誰かに金を払って頼みたいとはそもそも思わない。もちろん私一人で特集や連載を全部書けるわけではありませんし、各所にその道に詳しい方々にお書きいただいていますが、それでも自分で特集を組み立てて、自分が参加するという作業を続けていました。特集に直接執筆していなくても、地図を作ったり、注釈を加えたりという部分で手を加えているのです。

 それらのことは手間がかかることですが、やっていて楽しいし、手間をかければかけるほど読者の反応がいい。率直に言ってうちの読者は、執筆者に任せっぱなしで編集に手間をかけていないものにはぜんぜん反応してくれない。これは驚くほど率直でした。だから、体力が衰えて、手間がかけられないものを出しても、結局のところ、読者は反応してくれないし、買ってもくれないのです。本当にいい読者ですねえ(笑)

 というようなわけで、一応165号でお休みさせていただきます。ですが、前にも書いているように、出版活動をやめてしまうわけではありません。これからも本はつくっていきます。とはいえ、電子書籍の時代になっていくと、どこまで紙の本を作っていけるのかはなはだ疑問ですが、気力が残っていたら電子書籍だってやりましょう(いや、先のことはわからないんですが)。新しい本の企画もありますので、今後ともよろしくお願いします。