ただいま次号制作中

 次号の本誌(162号)「ベンガル特集号」を、連休前までになんとか一応の形に整えなければならないので、ただいま一生懸命がんばっている。しかし、まだ原稿が入っていない人がいて、うーん、待ち遠しいのだ。早く原稿を下さい。

 今回は特集の他の読み切りで、チベット語り部ケサルの話が掲載される。チベットには「ケサル大王伝」という長大な物語があって、語り部たちは、ある日突然、誰に習ったわけでもないのに、その長い物語をとうとうと語り始めるのだという。今回の記事に登場するケサルの一人がジェクンドに住んでいる。

 ジェクンドというと、漢字では玉樹と書く。そう、おととい大地震が発生したあの玉樹だ。原稿を組み終えて、中国にいる執筆者の田中奈美さんとゲラのやりとりをしていたら、地震のニュースが流れて驚いた。玉樹は街の9割が崩れたという話もあり、ケサルの方々もその安否が心配である。

 今回はその他に、インドネシアで盛んに行われているワヤン・クリという影絵人形芝居のルーツをたどる旅の話や、インドのマディヤ・プラデーシュ州の、かなり山奥に住む少年の、実に数奇な運命の物語とか、かなりしぶい話が掲載される。この少年の話は10数年前のことで、まあ最近といってもいいと思うが、この少年はまったく金も持たず、頼る人もなく、運命にもてあそばれながら、ついでに森の中でトラにも遭遇しながら、インドをさまよってしまうのである。こういうことが、まだインドのどこかで行われているということに、あらためてインドの奥深さを感じる。

 それはそうと、この前NHKのハイビジョンでやっていた番組を録画してあったのだが、それを見てびっくり。なんとそれはインドのヒマーチャル・プラデーシュ州の山奥にある、あの有名なマラナ村の話だった。「木々の家と民主主義」という番組だ。私も昔、ひいひい言いながら山を8時間も歩いて登って行ったことがある。マラナ村は奇妙なところで、外部の者が村の聖なる岩、建物に触れてはならず、村人にも触ってはならないという独特の掟を持っている。インドにありながら、インド政府も干渉しない独特のポジションを保っている村だった。

 それが、この番組によると、村の近くにダムを建設中で、村の近くまで車が通る道路ができ、それで選挙への投票が始まったというのだ(これまでは選挙など無関係だった)。国民会議派インド人民党が交互にやってきては選挙演説をやって投票を呼びかけ、村人たちは二つに割れてしまう。どうにも救いようのない話になっていてがっくりくる。あんな小さな孤立した村に国民会議派も人民党もどうでもいい話で、ほっといてやればいいのにと思う。そもそも誰もダムなど望んでいないというのに、当座のダム建設労働という仕事だけ与えて、生活の糧である放牧場をつぶされてしまうのが悲しい。どんどん近代化されるインドだが、それで破壊される村人の生活は二度と元には戻らないのだろう。

 マラナ村の最近の状況は、ここのブログで見られます。
「マラナ村の光と影」
http://sekakoh.web.fc2.com/india/india_parvati_malana.html