マラリアの薬

 この前アフリカに取材にいっていた写真家の小松義夫さんからメールをいただき、近頃はいいマラリアの薬ができていると書いてあった。スイスと中国の共同開発で、ヨモギが原料であるらしい。ぜんぜん知らなかったので、ネットで調べてみると、ありました。アフリカ方面ではすでにずいぶん有名な薬のようだ。

 その薬は「コアルテム」という。この薬はノバルティスという製薬会社が中国企業と提携して製造し、2001年に原価でWHOに供給し始めて、一気に使われ出したそうだ。現在のマラリアはクロロキンも効かなくなっている状況だったので、有効な新薬が安く供給されたら、爆発的に広まるのは当然だろう。

 マダガスカルに詳しい民俗学者の深澤秀夫という方は、次のように書いている。
キニーネ以来の大発見と言われる中国で漢方薬から開発された優れたマラリア治療薬アルテスネイトを基に、その即効性を高めた薬剤です。緊急時の自己内服による治療薬としては、即効性、効力、副作用の少なさの諸点に鑑み、現在最良のものと言えます。」(深澤秀夫『マダガスカル研究懇談会会報 Serasera』第19号)

 コアルテムは、中国で熱病治療薬として伝わってきたヨモギの仲間、黄花蒿(おうかこう)に含まれる成分と、これまでのマラリア薬を組み合わせたものだという。需要が多すぎて供給が追いつかなくなっているらしい。というのも、この黄花蒿は栽培に時間がかかり、中国南部で年に1度しか収穫できないんだそうだ。生育に6カ月かかり、アルテミシニンという成分を抽出して治療薬を製造するまでにさらに3〜5カ月要するという。ノバルティスの担当者は、アフリカでも栽培して原材料の供給を安定させたいとおっしゃっているそうである。

 コアルテムが供給されてからもう9年たっていたのだ。私はぜんぜん知らなかったが、マラリア患者の9割はアフリカ人だというから、アフリカはずいぶん救われていることだろう。最近は経済の面でも中国がアフリカにがんがん投資して、アフリカ諸国は急速な経済発展を遂げているようだが、アフリカは中国に感謝しているかもしれないですねえ(そんな単純なものじゃないか)。

 ちなみに原料の黄花蒿は、日本ではクソニンジンっていうんだって。なんちゅう名前じゃ。