若者は欲しがりません

 先日、ある旅行雑誌から原稿を頼まれた。打ち合わせの雑談で、最近の若者は旅行しなくなってといういつもの話になった。その雑誌では20〜30代の若者に「なぜ海外旅行に興味がないのか」というアンケートをとったという。そうしたら、いちばん多かった理由が何だったと思います? と、その編集者は情けなさそうな顔をしていった。
「金がないから?」
「それだったら納得がいくんですけどね、めんどくさいというのが1位なんですよ。それって理由になってないでしょ」
 確かにまあめんどくさいといわれると、それ以上言いようがない。金がないのは昔の若者だってなかったけど、それでも行きたい奴は行ったわけで、金がないのは最大の理由にはならない。めんどくさいというのは興味がないということだ。

 こういう記事がある。衣食住などの様々な市場で、欲しがらない若者達が増えているという。
「嫌消費」世代〜経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d01/2009/diamond200912.html

 クルマを買うなんてばかばかしいとか、酒も飲まない、大型テレビも必要ない、高級レストランも行きたくないという若者が増えているといっている。金がないわけではなくて、こういう理由だという。

──自分の夢や理想を高望みして周りと衝突するより、空気を読んで皆に合わせた方がいい」、と言う意識だ。この意識の背後には、児童期のイジメ体験、勤労観の混乱や就職氷河期体験によって植え付けられた「劣等感」があるようだ。「自己実現」をめざした40代以上の中高年の個人主義的な価値観とは対照的だ。

 こういうことをいわれている20代の方々はいかが思われることでしょうか。おまえらは世間に劣等感を持って空気を読むことばかり考えて、買い物もしなけりゃ海外旅行にも行かない連中だといわれたらムッとするねえ、私なら。クルマなんかいらないってのはエコだし、酒も飲まない、大型テレビも必要ない、高級レストランも行きたくないってけっこうなことじゃないの。

 私も若い頃はホントに金がなかった。大学卒業後1年目の確定申告は年収60万円だった。海外旅行など考えたこともなかった。私が海外旅行に出たのはある意味で偶然でしかないが、今の若者にはあまりにもありふれたことだから、かえってその魅力が見えにくくなっているのかもしれない。クルマも家電製品も世の中にあふれかえって、そんなものがまったく光り輝いて見えない。私だってその気持ちは十分に理解できる。逆の意味で「不幸な時代」なのだ。

 そんなものがあふれているよりも、未来に対する希望や展望が開けている方が幸福だろうとは思うのだが、そういう希望や展望は本人自身が切り開くものだから、バカにされっぱなしになってないで若者にはがんばっていただきたいと思うが、だからといって市場のために、必要でもないテレビやクルマを買うことはないよな。でも、めんどくさいじゃ先は開けないだろうねえ。