世界環境ディ

 昨日は世界環境ディだったそうだ(拍手)。ラジオでもエコエコとうるさかった。昨日に限らず、近頃はどこにいてもエコエコという声が聞こえてくる。うちの近所で金の買い取りをやっている店があるが、そこではのべつまくなしに「金を買い取りま〜す、ダイヤも買い取りま〜す、地球にやさしい店で〜す」といっている。金を買い取ることのどこが「地球にやさしい」ことになるのか意味不明だが、とにかく「地球にやさしい」とつければ聞こえがいいとでも思っているのだろう。「地球にやさしい建築会社」「地球にやさしい原子力発電所」「地球にやさしい証券会社」などなどなんでもOK。便利な言葉だ。

 最近のお笑いエコ運動は、なんといってもわが日本政府主催の「エコポイント」だろう。なにしろより消費電力の高いテレビを買えば買うほどエコポイントが多いというんだからお笑いである。さすがにこれはおかしいんじゃないのという声も多いようだが、いっこうに進まない地デジ化を早めるために、地デジ対応テレビを買わせたいのは見え見えなんだから、正直に「地デジポイント」といえばよさそうなものを。

 私が言うまでもないことだが、本当に地球環境を守ろうとするなら、こんなテレビなんか買わないで、アナログ放送が終わったらテレビを見るのをやめるのが最も自然破壊防止に寄与することになるだろう。微々たるものだけど。エコバッグも新しく買ったりしないで、使っていないバッグを引っ張り出してきて使うのが最もエコだし、ハイブリッドカーにも買い替えないで、今までの車に乗り続け、1000円になっても渋滞の高速道路には乗らないほうが「地球にやさしい」だろう。できれば自家用車も手放して、なるべく歩くほうがもっといい。本当にそんなことが可能ならだ。

 ところで、世の中は不況で、派遣切りが問題になり、失業率も高くなり、デフレでモノが売れなくて困っている。経済学者や評論家はみんなこういう。輸出ばかりに頼っている経済ではダメだ、もっと内需を増やせ。つまり、みんながどんどん買い物をしないから景気が悪いんだといってるわけですね。アメリカでサブプライムローンが破綻したのは、アメリ連邦準備銀行金利を上げたにもかかわらず、住宅ローンの金利が少しも上がらず、その結果危険なローンを組む人がやまなかったせいだそうだが、住宅ローンの金利が上がらなかったのは、日本の金利が低かったせいだという。日本の超低金利に目をつけて日本人もアイスランド人も、もちろんそれ以外の人も、日本から低金利で金を借りて、その金がアメリカの住宅ローン資金へとまわっていった。だから、連邦準備銀行がいくら金利を上げたって、まったく影響を及ぼさなかったのだそうである。

 なぜ今でも日本は低金利なのかといえば、もちろん景気をよくするためだ。金利を低くすれば金を預ける気がなくなってものを買うようになるだろうという思惑だ。つまり、エコであることと内需拡大アンビバレントというか、まったく逆方向の行為ということになる。これではどうしようもないので、内需拡大とエコを両立させる方法がエコ商品の開発なのだ。しかし、エコ商品を作るには二酸化炭素を放出しなければならないし、資源も使う必要がある。ぜんぜん地球にはやさしくないんだけど、しかし、エコ商品じゃないよりましだし、地球が壊れるからこれを買ってやさしくしてねというほうが売れるだろうということだ。これが現在のエコ運動の実状であることは、多分みんな気が付いているのだろう。

 では、私はエコ運動に反対かといえば、そうでもない。石油なしで走る車が一般的になって、石油の使用量をどしどし減らすことになれば、日本の安全保障にはいいだろうし、石油はいずれなくなるという前提で考えると、今から技術を進歩させ、別のエネルギー源を確保することは絶対に必要だからだ。エコバッグなんかどうでもいい。あんなものをわざわざ買っても技術は進歩しないし、自然の保全にもつながらない。売った奴が儲かるだけの話だ。いや内需拡大の役には立っているかもしれないが、10年たたないうちに流行遅れ扱いになるに決まっている。

 お笑いなのは、このニュースだ。
──弱る太陽 活動200年ぶりの低水準
──太陽の活動が200年ぶりの低水準にまで落ち込んでいる。これまでのパターンだと再来年には活動の極大期を迎えるはずなのに、活発さの指標となる黒点がほとんど現れない。研究者も「このままだと地球はミニ氷河期に入る可能性がある」と慌て始めた。
http://www.asahi.com/science/update/0601/TKY200906010159.html

 なんと、このご時世に、ミニ氷河期が訪れるという話だ。まったく笑うしかない。地球温暖化もひとつの学説なら、このミニ氷河期到来もひとつの学説である。さて、それじゃこの学説はどうするのかといえば、たぶん無視するんだろう。どっちみち地球温暖化だって政治と経済の都合でクローズアップされただけだから、都合の悪い学説など無視するに限る。氷河期到来なら二酸化炭素を排出しようということになって都合がいいと商売人が考えれば、それが採用されることになるのだ。さて、どうなりますやら。ホントにミニ氷河期が来たらどうする? おお、世界環境ディよ、おめでとう。