地球は冷えていく(かもしれない)

 一週間たつのって本当に早いもんだな。前の文は3日前に書いたばっかりという気がしてならないんだが、ちゃんと7日過ぎている。年とるとますます早く年をとる。

 2年前の当欄(2009年6月6日)で、もしかしたら地球はミニ氷河期に入るかもしれないというニュースを取り上げたことがある。地球が温暖化するといっている一方で、実は冷却化するかもしれないとの発表があったことが皮肉だったからだ。
http://d.hatena.ne.jp/kuramae_jinichi/20090606#1244255200
──弱る太陽 活動200年ぶりの低水準
──太陽の活動が200年ぶりの低水準にまで落ち込んでいる。これまでのパターンだと再来年には活動の極大期を迎えるはずなのに、活発さの指標となる黒点がほとんど現れない。研究者も「このままだと地球はミニ氷河期に入る可能性がある」と慌て始めた。

 という記事である。このとき、私は太陽の活動が衰えると、太陽から受ける熱量が減って、地球が冷えるのかと思っていた。しかし、そうではなかった。先日NHKBSプレミアムで放送された「コスミックフロント」を見たら、この地球冷却化説は2005年に、デンマーク国立宇宙研究所の研究員ヘンリク・スヴェンスマルク氏が発表したまったく新しい学説だったという。この番組をご覧になった方も多いと思うので、そういう人は飛ばしてください。

 太陽の活動が衰えても、地球が受ける太陽からの光の量は0.15%しか減らないので、ほとんど影響を受けないらしい。問題は、太陽から発生している磁場が衰えることだという。太陽系を覆っている太陽の磁場が衰えると、それまでこの磁場によって遮られていた宇宙線が太陽系にどしどし入り込んでくる。もちろん地球に降り注ぐ宇宙線の量も増大する。

 ここからが、最近の学説で、実は、地球の雲は、この宇宙線によってできるのだという。宇宙線が地球の大気に浮かぶ分子に当たると、それが電荷し、それらが引き寄せ合って微粒子を形成する。雲ができるには核となる微粒子が必要だが、宇宙線によってその微粒子が大量にできてしまうのだ。そしてかつてないほど大量の雲が出来上がっていく(スベンスマルク効果)。

 この学説によれば、宇宙線の降り注ぐ量と、雲の量はぴったり一致するという。この学説は世界中で論議をうみ、3年にわたる実験の結果、事実であることがほぼ証明されたんだそうだ。
http://oka-jp.seesaa.net/article/201022357.html

 というわけで、太陽の活動が弱まる→宇宙線が地球に降り注ぐ→雲ができる→日光が遮られる→地球が冷える、という結論になっていくのである。

 そんなことは何百年何千年も先の話だろ? と思っているあなた。宇宙規模のことはたいてい何万年とか何光年とかのスケールだが、これはなんと数十年先の話です。太陽の活動は11年周期でピークを迎えてきた。これは時計のように正確だったのだが、それなら今年がそのピークの年のはずだったのに、ピークを迎えていない。これはおかしいというわけで、過去1000年間の気象を調査したところ、地球の寒冷期の前は必ずこの周期が乱れて間延びしていることが判明したという。11年が13年になって、それを2、3周期繰り返したところで、寒冷期に向かっていることがわかったのだ。

 ということは、今年がその初年だとすると、再来年にピークを迎え、次のピークが2026年、もう一回繰り返すと3回目のピークが2039年で、それから地球は冷えていくということになるのだ。そのころ私は83歳だが、もう生きてないかな。現在40歳代から下の世代は冷たい地球を体験することになるかもしれないんですよ。今のうちにどしどし二酸化炭素を排出して地球を温めておいたほうがいいんじゃないか?

 ところが、この学説には反論もあり、2、3年前に調査した学者たちは、雲の量と宇宙線の量に関連性はないという報告を行なっているそうだ。このことはNHKの番組では一言の言及もなかったが、なぜなんだ? 明日から朝日を見る目が少し変わるかもしれません。いや、まともに見たら目によくないけどね。