メジャー雑誌のしぶい特集

 雑誌が売れないといわれている。また不景気な話? いえいえ、そういうことはなくもないですが、なんと「月刊少年ジャンプ」が休刊になったそうですね。あの「ジャンプ」が休刊だなんて、本当に雑誌の氷河期なのだなあと思いつつ、その記事を読んでみると、42万部に落ち込んだので休刊だと。42万部も刷れるのにこれじゃダメだという世界があるのだねえ。もっとも42万部は印刷部数なので、半分返本になったら苦しいだろうが、実際のところどれぐらい返本なのかはわかりません。

 僕が今読んでいる雑誌は、「ベストカー」、「本の雑誌」、「ナショナル・ジオグラフィック」、「季刊民族学」であるが、たまに「芸術新潮」、「pen」も買っている。「チルチンびと」や「季刊銀花」を買うこともある。漫画雑誌はさっぱり買わなくなった。この前(というかだいぶ前ですけど)驚いて買ったのがご存知「ブルータス」で、なんと写真家・杉本博の特集だった。杉本博という写真家をメジャーな一般雑誌が特集するとは思いもよらないことで、これがなかなかすばらしい1冊でした。

 メジャーな一般雑誌がこんな特集をして売れるのか? と思わせることがたまにあって、例えば「pen」(阪急コミュニケーションズ)という雑誌はそういう特集をよくやっている。以前は住宅の特集をよくやっていたが、最近は執拗なまでにデザインにこだわっている。雑誌のデザインが凝っているという意味ではなく、特集のテーマがデザインなのだ。この雑誌はいったい何の雑誌なのだろうかと、ときどき不思議になるのだが、そのデザインの特集が、例えば「東欧のグラフィック」(2/1号)だったりするのだ。

 僕はまあ職業柄、そのような特集は大歓迎だが、グラフィック・デザインの専門誌ならともかく、普通の雑誌でそんな特集はあまりしないだろう。チェコポーランドハンガリースロバキアに現地取材し、東欧のグラフィック・デザイナーとその作品を紹介しているのだ。しぶいでしょ? 去年の10/1号は「オランダの旅へ」という旅行特集だったが(これもなかなかよかった)、不思議だったのは、そのなかに折り込みページをわざわざ設けて、「オランダのグラフィック・デザイン」の小特集をやっていることである。これも他ではまずやらない企画だと思う。

 以前の本欄(「1970年の少年マガジン」11/9)でも書いたが、2006年4/15号では特集が「雑誌のデザイン」だったし、8/15号は「広告のデザイン」、11/15号は「いま世界には、アートが必要だ」、そして最新号2007年3/1号は「ロックのデザイン」である。徹底的にアートとデザインの専門誌と化している。しかも、テーマがしぶい。アナログレコードでプログレを聴いて育った僕の世代の人間なら、「ヒプノシス」なんて聞いただけで琴線に触れるものがあるが、メジャーな雑誌が特集して売れるようなテーマなのかは判断不能だ(ちなみにヒプノシスとはピンクフロイドの「原子心母」のデザインで有名になったデザイン・グループです)。

 で、まあ、こういう特集に共通するのは、中年狙いだということであろうか。1950年代あたりから現在までのデザインがさまざまな形で取り上げられている感じがするのだ。デザインの特集だから誌面も美しいし、高級品の広告もよく似合う。これでたくさん売れるのかどうかはわからないけれど、このような特集をぜひお続けになっていただきたいと思う。そして、できることなら、アジアやアフリカのデザイン特集なんかをやってくれたら拍手、拍手なんですけどねえ。

Pen (ペン) 2007年 2/1号 [雑誌]

阪急コミュニケーションズ (2007/01/15)
売り上げランキング: 39276