ネパールが共和国になる日

 次号の取材でカトマンズに行ってきました。マオイストと政府が和平協定に調印し、ネパールにもようやく平和が訪れようとしているということで、ずっとやりたかったカトマンズの特集をやることにした。

 うちの掲示板でも、カトマンズはストがあって移動が厳しいこともあれば、次の日からころっと普通の状態に戻ったりすると書かれているが、その点は現在も変わらないようだ。マオイストと政府が和平協定に調印しても、6月に行われる選挙を前に、平野部の民族が比例代表制を要求してストを打ち、インドからカトマンズへの補給線を遮断したために、カトマンズはガソリン不足に陥っている。軍隊がガソリンスタンドをガードし、1回に4リットルしか補給されないガソリンに、バイクやクルマが2〜3キロの列を作って順番を待っている有り様である。

 もし日本でこんなことになったら、かなりパニックになるのではないかと思うが、カトマンズ市民はこういうことになれているのか、ガソリンの補給が大変だと嘆く割にはあわてている感じがないし、タクシーなんかは普通に捕まる(多少は割増料金になることもあるが)。

 しかし、旅行者が減ったと聞いていたが、タメルの発展ぶりはすごい。10年ちょっと前に来たときにもタメルは発展したと驚いたが、それからますます増殖している。同じような土産物屋、レストラン、ホテルなどが通りの奥までずっと続いている。地元の人に聞くと、マオイストの活動が最高潮だった2000年頃は外国人旅行者がいなくなったが、その後はぼちぼち増えていたそうである。今は日本人の個人旅行者も団体客も、わりとひんぱんに姿を見かけるようになっている。

 発展しているのはタメルばかりではない。実はカトマンズそのものもバブルになっているらしい。詳しくは次号の記事をお読みいただきたいが、マオイストの活動によって地方の住民が安全なカトマンズに転居したり、あるいは平野部に住んでいた山地系の住民がこれまたカトマンズに引っ越してきたりで、カトマンズ盆地はそういう人々の住宅建設バブルとなり、土地の値段が急騰したそうである。日本の田舎よりも高いかもしれないと、カトマンズ在住の日本人が言っていたほどである。

 そういう人々は、カトマンズ郊外に瀟洒な住宅を建てられるほど金持ちであり(だからマオイストに狙われたのかもしれん)、それもあってカトマンズは経済的に潤ったようで、ショッピングセンターなどがばんばん建っている。自然食レストランなんてものもできて人気があるらしい。ここでもまた「格差社会」なのだ。金持ちの子弟たちは、きれいな洋服を着、デジカメを持ってショッピングセンターで買い物をし、100ルピーもするファストフードを楽しんでいる。

 さて、カトマンズは今のところ旅行者が滞在するには問題ないようだが、選挙の前なので地方でストライキが起こる可能性が高い。その選挙では、いよいよネパール王制を存続させるかどうかが問われることとなる。話を聞くと、今の王はあまりにも不人気で、王制にはうんざりしているという雰囲気だ。これまで「ロイヤル」の名を冠したネパール航空も、風当たりが強くなってそれを外した。どうもネパールが共和国となる日が近い気がする。