計画停電

 うちは計画停電の第1グループに属している。私が子どもの頃は、台風が来るとよく停電になっていたものだが、まさか自分が生きているうちに、電力不足で停電になろうとは思ってもみなかった。まるでインドやネパールのようだなと思ったが、そういえば初めてのネパール旅行で、激しい雨が降って停電になったとき、子どもの頃を思い出して懐かしかった。若い人は停電の経験などほとんどないかもしれないが、日本だって40年ぐらい前はたまには停電していたのだ。

 しかし、現代において、停電だといわれると、仕事にかなりの支障を来す。コンピューターを使っているので、いきなり停電するとデータがパーになる。うちのところは計画停電で○時から停電すると何度か告知されたが、実際には停電はなかった。だが、停電になるつもりで、その時刻には電源を落として備えるので、どっちにしても仕事に集中できず、早々に退社して節電に協力している。非常時だからしかたないことだが。

 東京電力東北電力の発電能力が落ちて電力不足になっても、余剰電力のある西日本からの電力補給が思うようにいかないという。ご存じのように、それは東日本と西日本の電気の周波数が異なっているためだ。西日本(60Hz)から東日本(50Hz)へ移住してきた私は、もちろんそれは知っていたが、いったいなぜ異なっているのかは知らなかった。ふと、それを疑問に思ってネットを検索してみると、同じことを思った人が多いようで、それを書いている人が多かった。検索すればすぐに出てくるが、その原因が明治時代に遡ることだとは意外だった。

 ウィキペディアには次のように解説されている。(項目「商用電源周波数」より一部省略)
──明治時代に関東では、東京電燈が50Hz仕様のドイツ製発電機を導入し、1893年に浅草火力発電所を稼動させた。しかし関西では、1888年に設立された大阪電燈が東京電燈と対立して60Hz仕様のアメリカ製発電機を採用した。これらを中心として次第に東日本・西日本の周波数が集約されていった結果、東日本と西日本の周波数の違いが形成された。

 電力会社の対立から周波数が異なってしまったというのだ。こういう例は極めて珍しく、地方によって厳然と周波数が違うのは日本くらいなんだそうだ。なんだかあきれた話だが、いったんそうなって、西と東で異なる規格の発電機が揃ってしまうと、費用がかかるので、そう簡単に買い替えることはできない。周波数が異なっても、多くは電気製品の方で対応できるようになって、これまでは事実上問題になることはなかったらしいが、今回のような非常時になると、その弱点がもろに出てしまったというわけである。

 なんというか、世の中ってけっこういいかげんというか、テキトーにやってきてたんだなあと思ってしまいますねえ。