忘れるんだよなあ

 毎度このセリフにぶつぶついっている私ですが、いいかげん「日本人が忘れてしまったもの」というセリフをなんとかしてくれんもんか。

 この前テレビを見ていたら、近頃巷で非常に評価の高いグラフィックデザイナーというお方にインタビューしてたのを見た。若い人である。名前を忘れたのでいくつだか調べようもないが、見た目は20代後半から30代前半というところ。この人がインタビューで「日本人が忘れてしまったものをなくさないようにしたい」などという。

 で、その日本人が忘れてしまったものって何かというと、最近、デザインするのに紙を指定すると、フラットな定番の紙がすぐ廃判になってしまうという。そういうことではいけないんじゃないか、などとおっしゃるのである。

 インタビューの一部だけを聞き、グラフィックデザイナーの発する言葉のあら探しなどしてもしょうがないということはわかっている。しかし、定番の紙がなくなったぐらいで日本人が忘れてしまった何かはないだろうとは思う。だいたいこの人のデザインだって思いっきり西洋風だし。

 それはいいとして、だいたい20〜30歳の人間がイメージする「日本人が忘れてしまったもの」って、具体的に何が考えられるのだろうか。30年前といえば1970年代だ。1970年代から見て現在の日本では何が忘れ去られているのだろうか。

 ケータイはなかったので固定電話ばかりに頼っていた、とか、雑誌も本もずっと売れていたとか。「ポパイ」という雑誌が全盛期だったとか、学生運動の余波がくすぶっていたとか、フォークソングが流行っていたとかか。忘れてもそれほど騒がなきゃいけないことが多いという気もしない。そんなことより、ベトナム戦争があったことや、カンボジア内戦があったことなど、国際関係のことだって大事だろう。そこんとこはどうなってるのか。

 と、ここまで書いて、なるほどと思いました。日本人が忘れたものって、つまり日本人は物忘れがひどいから、日本のことに限らず、そういうことも覚えておかなくちゃいけないということですか? それは私の場合、人を批判できるような記憶力がないから黙っているんですけど。