意匠登録の費用

 先日、旅行人の名前とマークの登録を継続更新した。旅行人を商標登録して10年がたったのである。感無量であるが、その更新登録費用がなんと15万1000円! つまり1年間の登録料金が1万5100円ということであり、旅行人という名称を独占的に使用する権利を、毎月1250円を国に支払って買っていることになる。

 想像が付くと思うが、このような商標登録や意匠登録は無数といってもいいほど数多い。ある名称を登録するためには、過去10年間に同じ名称が登録されていないか調べなければならないことになっている(庁員がやってくれるのではなく、自分でやるのだ)。

 普通の会社は、こういった手続きを弁理士に任せるらしい。弁理士は多分アルバイトかなんかを雇って10年分のリストを当たらせるわけだが、われわれはその金がなかったので自分たちでやった。一つの名称を一つのジャンルに限定して見るだけでも軽く10日間はかかるほどたくさんある。

 ここでいう一つのジャンルというのは、例えば旅行人の場合は印刷物というようなジャンルだが、これを衣料にも独占使用しようと思ったら、そのジャンルでも登録しなければならないのだ。もちろんそっちの名前も10年分をチェックし、別に登録料を支払わなければならない。

 ということを考えると、この登録費用がいかに莫大な収入になるか容易に想像が付く。ちなみに2004年の商標登録が何件あったかというと、9万5866件である。新規登録の場合は更新登録より安く6万6000円なので、新規の商標登録だけで63億2715万6000円。

 思ったよりたいしたことがないと考えてはいけない。これは一年間の商標登録の新規登録分に関してだけなのである。新規登録を10年後に更新すると倍以上の金額になり、それに商標登録だけでなく、意匠登録、実用新案など特許項目も多岐にわたる。これらがいったいいくらになるか、計算方式が複雑なので簡単ではないが、更新される登録は基本的に積算されていくので、入ってくる金もどんどん増えていくことになるのだ。

 この莫大な金は、特に何かを生産したとか、何かをやって稼ぎ出したというものではない。たんに、おまえが考えた名前あるいはアイディアを、おまえだけが使っていいと認めてやったというだけなのだ。それだけでこれだけの金が転がり込んでくる。近年ではこういうデータもコンピューター化されて、照合も簡単になったようだが、だとすれば人件費もますますいらなくなり、さらに儲かるようになっている(笑)。

 もちろんこのような制度は必要である。そうでないと誰もが売れた商品の名前を付けて売り始めるからだが、こんなうまい商売は、税金制度を除けばおそらく他にはないであろう。国家というのは考えようによっては儲かる制度であり、こういう規制なり制度をどんどん作って金を徴収できるわけで、だから天下り機関がどんどんできるのだろう。それにしても15万1000円は高いと思うぞ。