暑い家


 残暑お見舞い申し上げます。まったく暑いですねえ。ボーッとしている間にはやくも前の日付から11日が過ぎて、あわてて当欄を書き始めたところです。今日は終戦記念日ですか。戦後60年なんですね。

 戦後60年の話ではなく、暑いという話を書こうとしてるのだが、昨今の東京はホントに暑くなった気がする。温暖化のせいなのか、たまたまそうなっているだけか、あるいは単なる気のせいかわからないが、まあ、みんな暑くなったといっているから気のせいばかりでもなさそうだ。

 僕はよく『劇的ビフォー・アフター』やら『渡辺篤史の建築訪問』なんていうリフォーム番組や建築番組を見るんだが、こういう番組で紹介される家は、きまって部屋はなるべく明るくするのがいいということになっていて、南側に巨大なガラス窓をどーんと作ったり、天井には天窓を作ったりする。

 はっきりいって、こういう家はものすごく暑いこと間違いない。明るいということは暑いというのとほぼ同義である。昨今の夏をどのように過ごしているのか、そういうことをレポートして欲しいなと思うのだが、みんな明るくてとてもいいですとしか言わない。ホントかいなと疑う。

 それで思い出すのが、以前、雑誌「ブルータス」でやった特集企画「建築家に自宅を建ててもらう」というやつ。その企画で、あの世界の安藤忠雄大先生に建ててもらった人がいた。これがすごい。波打ち際まで10メートルという海辺に、例によって小さなコンクリートの住宅を建てたわけだが、海に向かって巨大なガラス窓が口を開いているのである。あれは蒸し風呂と同じで、夏は住めるわけがないであろう。いくらクーラーをかけても追いつくわけがない。

 こういうことを力説するのは、僕の家も暑いからである。わが家が暑いのは天井裏がないからだ。そのうえ屋根も瓦屋根ではなく金属板なので、夏の2階は気温が40度以上にあがる。とても過ごせない。屋根に登って水でもぶっかけてやろうかとさえ思う。天井裏をなくすことで高さを稼いで解放感を出す、というのが狙いなわけだが、天井裏があるというのは、かくも偉大なことだったのかとつくづく思う。

 ついでにいうと、瓦も偉大である。暑さにも有効だが、雨の日にも偉大である。金属板の屋根は雨が降るとバタバタと大きな音がしてうるさいことこの上ないのだ。大声で話さないと聞こえないぐらい雨音がうるさいことさえ珍しくない。まったく伝統建築は偉大なりだ。

 2週間ほど取材で留守にします。今回はモロッコ、スペインに行く予定。その間また当欄はお休みですので、よろしくお願いします。それでは、暑さにめげないでお元気でお過ごし下さいますよう。