ゴーゴー・インド30年のイベントを終えて(1)会場の問題

 今年の3月頃だったか、「『ゴーゴー・インド』が出てからちょうど30年になるから、なにか記念イベントを開きましょうよ」と前原利行さんに提案された。いまどき前原と聞けば民進党の党首だが、利行さんのほうは「旅行人ノート」や「地球の歩き方」などを手がけるガイドブック制作のプロで、その前は音楽番組の裏方も勤めていた経歴の持ち主だ。
 イベントをやるのはそれなりに大変なことはわかっている。単純に無料の個展をやったら会場費だけで赤字になる。なので、赤字を出さないためには、それなりの仕掛けと準備が必要になるのだ。それをやるのがけっこう大変だ。
 やりましょうやりましょうと強く誘われるうちに、それじゃやりますかという気持ちになり、まず会場を確保することから準備がスタートした。しかし、こういうイベント会場の予約は半年前だとすでに遅すぎるのが常識だそうで、なかなかこれといった会場が見つからなかった。ずるずると1か月がたち、田中真知さんに「早稲田奉仕園なんかいいんじゃない?」といわれて電話してみたところ、運よく空きがあり、ようやくあの会場が確保できた。
 ちょうど30年といったが、数えてみると31年たっていたことがあとからわかったが、まあほぼ30年ということで、タイトルを決め、トークイベントや物販というお決まりの案が並べられたが、問題はトークイベントで誰を呼ぶかということだった。トークイベントでどれだけ人を呼べるかで今回の収支が決まる。ここで客が入らないと悲惨な結果になるので、いの一番に上がったのが椎名誠さんだった。
 そりゃ椎名さんみたいな大物を呼べれば文句はない。受けてもらえるのかが大問題だ。だが、たまたま僕はそのちょっと前に、椎名さんからじきじきに電話をいただき、椎名さんのつくっている雑誌にエッセイを書いたばかりだった。まだ僕の電話にはその余韻が残っているぐらいだ。それで思い切って連絡したところ、こちらの緊張をよそに快くご承諾をいただけたというわけ。
 高野秀行さんも超売れっ子なので、引き受けていただけるか不安だったが、ご快諾をいただけてどっと安心した(高野さんは講演依頼がめちゃくちゃに多くて自分一人でマネージメントができなくなっているぐらい人気がある)。他にも何人か候補者があったのだが、優先順位というのは特になく、とにかくお願いしてみてダメだったら次の人に頼もうという突撃依頼だったので、ホールでのトークは椎名さんと高野さんに決めることができた。
 ギャラリーでのトークは事前の下見で観客数30人程度ということだった。こちらはもう仲間うちで十分大丈夫だろうということで、このイベントに協力してくれた松岡宏大さんの話を僕が個人的に聞きたかったこともあってお願いした。
 さて、ここでまた問題があった。いったい椎名さんや高野さんをお呼びすると何人の人が集まってくれるのかだ。もちろんお二人のことだから多くの人が来るだろう。だが、その「多く」というのは何人なんだ? これまで20〜30人ぐらいのトークイベントしかやったことのないわれわれには、それ以上は見当がつかないのだ。
 早稲田奉仕園でこのとき確保できる会場の最大観客数は100人。100人も人を集めたことがないからよくわからないが、椎名さんと高野さんだからこれでいいだろうと予約した。そしたら、告知後あっという間に満席になった。まだチラシも刷り上がっておらず、配るころには売り切れという事態になって、さすが二人の威力はすごいとあらためて感心した。200人の会場があれば、それも満席になっただろうになあ。ま、しゃーない。
 松岡さんと私のギャラリートークも結局満席になり、これですべての会場費+運営費がまかなえるメドがたったのでした。めでたしめでたし。



初めてつくったチケット。通常はもちろんこんなものはつくらないが、キャンセルが多いとますます参加人数が把握できないので、客にもこちらにも手間がかかるけどチケット前売り制にした。