インド旅行のインターネット事情(2)モバイル機器

 今のスマホタブレットは、Wi-Fiがないオフライン状態でも、機器に内蔵されたGPSによって地図上に自分の位置が示されることを前の旅行で教わった。それを試してみたくて、今回のインド旅行では中古のスマホ(中古のアンドロイド端末で9000円ぐらい)を購入し、インドに持参した。電話としても使えるので、あらかじめ日本でSIMロックを解除し、インドでSIMを入れるつもりだった。

(docomo)AQUOS PAD SH-08E

(docomo)AQUOS PAD SH-08E

 だが、残念ながらインドで入れたSIMがつながらなかった。SIM屋にいわせれば、僕のスマホに問題があるそうだが、インドで入れたSIMはなかなかつながらないらしい。
 そういうわけで、電話はできず、Wi-Fiが飛んでいるところしかネットにアクセスできないスマホになったが、冒頭に書いた地図とGPS機能は使えるので、それを試した感想を書いてみたい。
 おそらく、とっくに経験なさっている方も多いと思うが、列車やバスに乗っていて、地図上に現在位置が示され、目的地まであと何キロあるかが即座にわかるのは本当に便利である。例えば長距離列車に乗っていて、早朝や深夜に目的の駅に着く予定になっている場合、自分がどこにいるのか、あるいはあと何分で目的地なのかわからずに緊張することが多かった。終着駅なら問題ないが、予定通りに発着しないことが多いインドの列車では、窓から目を凝らして駅名をチェックし、時刻表で目的の駅までの距離を確認しなければならなかった。それが、スマホがあると一発でわかるので安心して列車に乗っていられるのだ。
 あるいはバスに乗っていて、車窓から珍しい風景や建築物が見えたときも、今まではどこそこに行く途中にこういうものが見えたなあという程度で終わりだったが、スマホがあれば、それがどこなのか正確に特定できる。もしSIMが機能していれば、それが何なのかもネットで探し出せるかもしれない。
 僕は今回、ラージャスターンの村を巡って壁画を探しまわった。そういう村は地図にも出てこないような場所だったりする。以前は、リキシャに乗って村を巡る際に、磁石で方向を見て、出発地からだいたいこの方向にどれぐらい行ったからと見当を付けて地図で探したが、正確な位置が特定できないこともあった。だが、今回はGPSで地図を追っているので、どんなところだろうが正確に位置をつかめるのだ。
 ガイドブックに載っているような街でも、必ずしも地図が載っているとは限らない。地図のない街を訪れるとき、駅やバススタンドから目的のホテルまで順路がはっきりわかるのは心強い。2キロしかないのに、リキシャが5キロだ10キロだというウソにごまかされることがない。リキシャに道案内までできる(今回実際にやりました)。
 地図が載っているようなメジャーな街でも、やはりスマホの地図で自分の位置が示されるのはいい。僕は地図を見るのが上手ではないので、地図を見ながら反対方向に行くという間違いをよくやらかす。だからこれまで磁石で何度も方向を確かめつつ、地図を広げて方向を確認したものだったが、もうそんな必要はなくなった。おかげで、これまで絶対に必要だった方向磁石付きの時計が不要になった。

これが画面に現れるブーンディのMaps.meの地図

 モバイル機器の便利さはもちろんこれだけではない。ガイドブックや関連資料の電子書籍、PDFをいくらでも持っていけるのがなんといってもすばらしいし、ネットにつながれば、列車の時刻表もすぐに検索できる。日本でよく使う路線検索がインドでも可能なのだ。これです。他にもいろいろあると思いますが。
http://indiarailinfo.com/search/ndls-new-delhi-to-jp-jaipur-junction/664/0/272
 これを見れば、目的地までの列車が何本あり、何時に出て何時に着き、料金はいくらということがすぐにわかる。もう「トレイン・アット・ア・グランス」を購入する必要はない。
 今回の旅では、インド政府が突如として高額紙幣を廃止するというアクシデントに見舞われたが、「たびレジ」に登録したおかげで、日本大使館からの情報メールで逐一変わる情勢もけっこう正確に把握することができた。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
 それからついでに書くと、以前はホテルで音楽を聴くのに、カセットテープを持ち歩いてウォークマンに小型のスピーカーを接続して、などといったことをやっていたが、もちろん今はそんなことは不要だ。Wi-Fiさえつながればあらゆる音楽を自由に聴くことができる。これが実にいい。
 スマホ旅行初体験の僕が経験したことなので、これまで書いたことは皆様には「当たり前でしょ、今頃何をいってるの?」てなものだろうが、とにかくこれほど旅は便利になったのだ。
 旅は便利であればいいのか? 失うこともあるのではないか? とおっしゃる方もいることだろう。今回僕は何かを失った気はまったくしないのだが、しいていえばついWi-Fiを接続してFACEBOOKやらTWITTERを見てしまうのが悪い癖になってしまったとはいえるだろう。日本の新聞さえダウンロードして普通に読めるので、以前のように現地の英字新聞を買って苦労しながら読むというようなこともせず、つねに日本とのつながりが切れないという意味では旅の気分が少し変わったかもしれない。それが旅にとってどれほどの意味を持つのかは、人によっても違うし、自分にとっても経験を重ねないとよくわからないことではある。
 ネットで予約しなければ安宿でさえ宿泊を断られるというようなことが世界各地で起きている。それははっきりいって困る。予約した通りに動かなくてはならないのではまったく自由ではない。だが、今回のインドでは一度もそのようなことはなかった。ふらっとホテルに行くと、どこでも宿泊できた。ずっとそうであってほしいと思う。
 インドに限らないが、ホテルでよくいわれるのが、「トリップアドバイザー」に高評価を付けて欲しいというお願いだ。いまや「トリップアドバイザー」はガイドブックより権威があるようだ。地図もホテルもネットでOK。そうなるとガイドブックはこれからいったいどうなっていくのか考えざるを得ない世の中になってしまったようだ。

 さて、本年もいよいよ終わる。今年もまたこのブログをたいして更新できなかったが、来年もあまり期待せず見守って下さい(笑) どうぞよい年をお迎え下さいますように。