僕の高校時代──1971〜1975(1)高校入学

 2016年が明けて、1月ももう終わろうとしている。例によって2ヶ月もブログを更新しないままだったので、新年の挨拶もできませんでした。申し訳ありません。

 さて、今回からこのブログに連載を始めようと思う。
 といっても、10年以上前にある文芸雑誌に書き、ボツになった原稿を何回かに分けて掲載するだけですが。しかも、旅の話ではなく、私の高校時代の話である。興味がない方も多いかもしれないが、『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎)をお読みくださった方には、あそこに書かれた話の前の時代にあたる話だと思って読んでいただければと思います。
 では、何回続くかわからないけど(10回ぐらいかな)、始めます。


僕の高校時代──1971〜1975

(1)高校入学
 毎日ため息ばかりついていた。
 僕は父の希望通り、鹿児島市内にある公立の進学校に入学できたというのに、毎日暗澹たる気分であった。
 入学試験の成績はまずまずだったと思う。公立学校の入学試験は、進学校であるなしにかかわらず全高校統一問題である。したがって問題はひどくやさしく、試験が終わって自己採点すると、平均90点以上は確実と思われた。僕の希望校は平均90点が合格最低ラインだといわれていたので、結果が出るまでははらはらしたが、それでも合格するだろうと思っていた。そして、思惑通り合格を勝ち取ったのだ。
 入学したとたんに、その高校に入ったことを後悔した。入学直後、実力テストと称される一斉テストが実施され、僕はそのテストにさんざんな成績しか残せなかったのだ。結果が発表されると、担任の教師が僕を名指しして、職員室へ来るようにといった。
 こんな成績では叱責されるのはいたしかたない。なにしろ新入生550人中350番だったのだ。入学試験が終わり、長い受験生活からようやく解放された僕は、入学してすぐに実力テストがあるとわかっていても、とても勉強する気にはなれなかった。入試のあとの短い休みに勉強するくらいなら死んだほうがましだ。実力テストなのだから自分の実力だけで臨むべきであり、そのための勉強はしないことにしたのだ。その結果、まったく実力のないことが証明されたというわけだ。
 おそるおそる職員室に入り、担任教師の前に座ると、頭のはげかかった教師は、僕の肩をぽんと叩き、「蔵前、よくやったな」といった。
 え? どういうこと? なんでほめられるんだ?
「おまえ、この休みに相当がんばったようじゃないか。うちのクラスで実力テストの成績をこんなに上げたのはおまえだけだぞ。よくやったな」
 成績を上げたもなにも、高校に入って初めてのテストではないか。何と比較しているのだろうか。
「先生、成績が上がったって、どういうことでしょうか」
「ふむ、おまえはな、入学試験の成績は480番だったんだ。だから今度の実力テストで一気に130人も抜いたんだ」
 あぜん。
 自己採点ながら平均90点以上をとって悠々と合格したつもりだったのに、うしろから数えて70番目だったなんて……。
 僕は目の前が真っ暗になった。
 130人抜きを教師からほめられても、まったくうれしくはなかった。当然である。教師は、僕がこの休みに猛勉強して挽回したと思っているのだ。勘違いも甚だしい。むしろ、入試であれだけの高い点をとりながら、それでも550人中480番だったということに愕然となった。
 これはとんでもない高校に入学してしまったと思った。僕が実力テストで350番だったのは、僕以上に他の生徒たちが手を抜いただけのことである。
 僕の長く憂鬱な高校生活はこうやって始まった。