ポルトガルが財政破綻

 やれやれ、こうなるんじゃないかとはいわれていたが、やっぱりこうなってしまった。予測通り、ポルトガル財政破綻寸前だ。追加財政再建策を議会で否決されたソクラテス首相は辞任し、EUに緊急支援を要請した。EUに支援を申請するのは、ギリシャアイルランドに続き3カ国目だが、ポルトガルが破綻すると、次は、ポルトガルに最も投資しているスペインにも飛び火するといわれている。スペインがダメになると、GDPの3.4倍の対外債務を抱えているイギリスもダメになるんじゃないかともいわれ、そうなったらヨーロッパは沈没だぞ。

 ただいまポルトガルの特集をつくっているところなので、ポルトガルで検索すると、引っかかってくる記事は財政危機ばかりだ。日本では東日本大震災のニュースがマスコミの報道を埋め尽くしていたが、同時に地震直後からユーロやポンドがどんどん下落していた。ドルも下落しているが。日本が未曾有の災難に遭って、自動車も作れなくなっている時期に、円に対してユーロやドルが下がるってどういうこと? と思ったが、ヨーロッパの経済危機は、東日本大震災より強烈ということなのか。

 ユーロ諸国で財政危機が叫ばれている国を「PIIGS」と呼ばれているのはご存知のことと思うが、ポルトガル、イタリア、アイルランドギリシャ、スペインのことを指す。去年は確か「PIGS」で、アイルランドは入っていなかったが、最近では「PIIGGS」といわれるようにもなり、新しく「G」ことグレート・ブリテン、つまりイギリスが加わったのだ。(ギリシャ財政破綻すると、ドミノ倒しに危機を迎えそうな国を表す「STUPID」という略語もあるらしい。Spain, Turkey, UK, Portugal, Italy, Dubai)

 ポルトガルを旅してきたばかりだが、ちょっと旅したからといってポルトガル経済の状況がわかるわけでは無論ない(経済状況を知るためなら旅行なんかしてないで資料を読んで勉強しなきゃわかりっこない)。だが、ぐるっとまわってみると、ポルトガル各地で「売り家」ばかりが目立っていたのは確かだ。私がポルトガルを出発したのは、震災前夜の3月10日だったが、12日にはリスボンで大規模なデモも行われた。

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 ポルトガルが財政危機に陥ったのは、長いあいだ経済成長が低すぎたせいだといわれている。景気が低迷して税収が伸びないのに、公務員給与などの歳出はカットされなかったので、財政赤字だけが拡大していったというわけ。

 それでは、なぜ経済成長しなかったのか。橋本拓磨「ユーロ防衛の最後の砦」では、次のように述べられている。
(1)過度な規制による非効率な国内市場
(2)低い教育水準に基づく貧弱な人的資源
(3)高い労働コストなどによる低生産性
 長年続いてきたことなので、すぐに改善しますというわけにはいかないだろうが、EU世界銀行が介入してくれば、有無をいわさず「なんとか」させられてしまうのだろう。しないわけにはいかないのだ。

 もしポルトガルがユーロ圏に入っていなければ、こんな危機には陥らなかったのではないかという説もある。ドイツやフランスなどに比べ技術力や生産性で劣る経済弱小国は、EUに加盟しないで独自の通貨を使っていれば、通貨の切り下げや為替レートの変動で産業の国際競争力を高め、財政を改善することも可能だったというのだ。

 しかし、今やドイツやフランスもスペインに巨額の投資を行っているので、ギリシャがダメになり、次はポルトガルが倒れ、その影響でスペインが……とドミノ倒しになると、最後はフランスとドイツにも災難が及ぶわけだ。もちろんそれはまわりまわって日本にも及ぶ。ちょっと目が離せない事態になりつつある。まあ、1ユーロは100円台になるとかいっているので、ヨーロッパを旅するにはチャンスなんだが。