ポルトガルの高速道路

 以前のブログ「ポルトガル財政破綻その2」(http://d.hatena.ne.jp/kuramae_jinichi/20110518/1305696853)でも書いたが、ポルトガルを旅し財政危機といわれる割には、ポルトガルは新しくて立派な高速道路がはりめぐらされ、しかもまだ各地で建設中であることに驚かされたものだった。財政不況でもこういう高速道路をつくるだけの余力があるのだろうかと不思議に思ったものだが、今朝の朝日新聞(2013年2月10日付)に、そのことが載っていた。見出しは、「無駄な道路 官民で延々」「融資利用、国の負担先送り」

 記事によれば、1993〜2006年でポルトガルの道路網は年平均9.3%伸び、中国などに続き主な国の中で4番目に多いとか。もちろんこういう道路は借金でまかなわれたわけだが、日本の高速道路と違って無料なので、高速道路の建設と利用で経済効果は上がる可能性はあっても、道路そのものの採算は採れない。景気がよくなれば建設費用は税収で補えるが、不況ではつくればつくるほど借金はかさむ。しかし、ポルトガルは高速道路の建設に邁進し、2兆2000億円の借金を今後20年で返さなければならなくなったそうだ。

 ポルトガルの大学教授は次のように指摘する。
──政治家は票集めのために自分の選挙区に道路を造りたい。官僚は手っ取り早い景気対策として公共工事をしながら、財政負担を先送りできる。出資する建設会社は工事を受注でき、政府の後ろ盾で取りっぱぐれのない銀行は甘い査定で融資する。誰も責任をとらない仕組みが、無駄な道路を国中に造った。

 朝日新聞も書いていることだが、これじゃ日本とまったく同じ。それで批判がわき起こって民主党が政権を取ったわけだが、また自民党が返り咲いて同じことをやろうとしている。必ずしもポルトガルの二の舞になるとは、専門家でもない僕にはいえるはずもないが、経済政策は専門家だってまったく異なった政策をそれぞれに唱えて譲ることがないので、正解などないのだろう。日本はポルトガルとは違うと信じていられるうちはいいんだけど、結局ポルトガルはこうなってしまった。

──経済危機に伴う緊縮財政で苦しい国民生活が続くポルトガルで、過去2年間に人口の2%以上が国外に流出したことが分かった。英BBC放送が27日までに伝えた。ポルトガルの人口は2011年時点で約1056万人だったが、このうち約24万人が国外に転出。高い教育を受けた若者が仕事を求めて豊かなスイスや、アフリカ有数の産油国に成長した旧植民地アンゴラに行くケースが多いという。ポルトガル金融危機や欧州債務危機で財政難に陥り、11年から欧州連合(EU)などの金融支援を受けて財政再建に取り組んでいる。だが大幅な増税や歳出削減で景気は回復せず、失業率も上昇し続けている。(共同)
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/01/27/kiji/K20130127005070320.html

 問題を先送りにした結果、将来はこうなってしまうという悪い見本にならないといいのだけどねえ。