インドの装飾瓦

 去年行ったインド中央部のマディア・プラデーシュ州で、装飾瓦というのを初めて見た。旅行人カレンダーにも掲載したが、こういうものです。


 屋根の上に妖怪や怪獣のような生きものどもがのっかっている。まるで宮崎駿のアニメみたいな世界。満月の夜にこの屋根を眺めたら、どんなに幻想的なことかと思う。

 しかし、インドでもこういう瓦で屋根を飾るところはどんどん少なくなってきているらしい。私も実際に見たことはない(写真はボーパールの博物館に展示されていた屋根なのだ)。この地方に詳しい方に話を聞くと、こういう瓦を作る職人も少なくなっていて、なかなか見つけられないという。

 ところが、この前のベンガル取材で、陶工の取材をしていたときに、その仕事場で装飾瓦が見つかった。初めて見たときから、どこかに売っていないか気を付けていたのだが、ようやく西ベンガル州の田舎町で、たった一つだけあった。それがこれ。

 値段は数百円なので、たいしたことはないのだが、他にはないという。もうこういうものは売れないから作っていないというのだ。その後、何軒かの陶工や店で探してみたが、二度と見つけることはできなかった。

 実に美しい彫刻だと私は思っているのだが、問題はテラコッタなので非常にもろいということだ。細い首なんかはすぐに折れてしまうなと思っていたら、案の定、持ち運びの際に折れてしまった。こんなものを持ち運ぶには、木箱か何かをあつらえないと運搬はとても無理だ。帰国後、接着剤で貼り付けたあとが首にくっきり残っている。残念。しかし、私の最もお気に入りの一品の一つです。