ソマリアで飢餓?

 最近ソマリアの飢餓がニュースで流されている。9月4日付けの朝日新聞では、モガディシオから前川浩之記者が次のような記事を書いている。

ソマリア飢饉 孤立の果て 食糧価格高騰 追い打ち
 飢饉が深刻化しているアフリカ東岸の国、ソマリアへの国際支援が苦戦している。内戦を繰り返し、南部地域をおさえる武装組織が国連を敵視して十分な活動ができない。昨年から出ていた干ばつの兆候への対応も遅れた。

 というような見出しとリードのあとに、モガディシオの難民キャンプを8月31日に前川記者は訪れ、難民にインタビューする。

──マディーナ・マリさん(50)は「満足に食べられない。苦しい」。スープなどの食糧支援は地元NGOだけ。国連機関の姿はなかった。
──世界的な食料価格の高騰が追い打ちをかける。ソマリアの食料価格は1年で270%に上がった。ソマリア人たちは、財産の家畜を売っても十分な食糧を買えないでいる。その家畜さえ失ったケイレー・イスマイルさん(34)はモガディシオマッジョ難民キャンプで訴えた。「子どものことが頭を離れない」。5人の子どもを母親に預け、1歳の息子モハンマド君を抱いて逃げてきたという。
──だが、「地震などと違って、じわじわ迫る飢饉は『派手さ』に欠ける。子どもが目の前で死にはじめてやっとお金が集まる」(援助関係者)のが現実だという。
──基礎となる情報収集もままならず、死者数は「万人単位」の表現のままで積み上がり続けている。

 こういう記事を読むと、なんと悲惨なことだろう、国連は何をやっているんだと悲しい気分になる。だが、ちょっと待て。最後の「基礎となる情報収集もままならず、死者数は「万人単位」の表現のままで積み上がり続けている。」ってのは、確かな情報は入ってこないが、誰かに毎日何万人も死んでますよといわれたということか?

 そのソマリアモガディシオについ最近までいた高野秀行さんが、現地でブログを更新し、次のように書いている。

ソマリア大飢饉の嘘(2011,09,02, Friday)
http://www.aisa.ne.jp/mbembe/
──メディアの報道や国連などの発表は明らかにおかしい。
──半分くらいは嘘じゃないか。ソマリランドでは飢饉など一切起きていない。
──食料の物価の上がってないし、昨日など、ソマリランド政府が南部ソマリアに援助の寄付金を送ったと発表した。

 この話はソマリランドなので、朝日新聞が飢餓に陥っていると報告しているソマリアではないから、記事と矛盾してはいない。だが、高野さんが滞在しているソマリランドハルゲイサの市場に行くと、市場に並んでいた食糧袋は「WFP」とかUS-AIDEとか書かれた援助物資だったという。

 しかも、その援助物資はもともとソマリアモガディシオの市場に出まわっていたもので、モガディシオでは食料の値段がすごく安くなっており、それでハルゲイサの市場まで流れ着いてきたというから驚く。新聞記事とぜんぜん違うじゃないの。
 再び高野さんのブログ

──ソマリ人ジャーナリストの間では、モガディショや南部ソマリアにおける国連関係と国際NGOの現地スタッフがいちばん腐敗していると有名だそうだ。
──政治家やウォーロードや氏族のボスなどの利害を調整し、セキュリティを確保するにはそういうことに長けたブローカーが不可欠で、まさにそういうブローカーが現地スタッフを勤めているから、援助物資やカネは流れ放題だという。

 うーん、これもまた伝聞なので正確なところははっきりわからないのだが、高野さんのブログを読むと、難民キャンプの難民は明るい笑顔だったというし(安全で食べ物のあるところにようやく逃げてこられたので明るくなるんだそうだ)、本当に万単位で人が死に続けているのか、疑いたくなってくる。

 高野さんはいずれこのことを書くといっているので、期待して待ちたいと思う。