コーカサスの旅 アルメニア

 コーカサス三国の首都で最も物価が高いと聞いていたアルメニアのイェレバンだが、このところアルメニア・ドラムが下がっているせいで、思いのほかアルメニアは安く旅ができた。少し前まで1ドル=300ドラムだったのが、今は360ドラムで、2割ほど安くなっている。
 アルメニアキリスト教を国教とした世界最初の国として知られているが、そのせいか古い教会が各地に点在している。アルメニアの観光はほとんどそういった教会を巡る旅になる。しかし、教会ばかりまわっていると、どれも同じに見えて飽きてくるので、日程も短いのでかなり絞り込み、アルメニアで見た教会は6つ。アルメニア教会の総本山エチアミンジン大聖堂は総本山だけあってさすがに立派な聖堂だったが、いちばんよかったのはイェレバン近郊のゲガルト修道院だ。
 ゲガルト修道院は12世紀ごろに建設された修道院だが、ゲガルトとは槍の意で、キリストを刺した槍がかつて収蔵されていたところから槍の修道院と呼ばれたそうだ。キリスト教以前からここは聖地だったそうで、岩山をくりぬいた前室が実に神秘的な雰囲気をたたえている。そこではしょちゅう聖歌を合唱していて、アカペラの歌声が室内に響き渡り、荘厳な雰囲気をつくりだす。音響効果を計算に入れて掘り抜かれた岩山であることに感動した。

 さて、コーカサスの旅もいよいよ終盤を迎えようとしている。このブログを書いているのは、アルメニアからグルジアに戻ってきて、クタイシというグルジア第二の都市だ。ここの民宿にはインターネットがあった。
 初めにアゼルバイジャンに入ったときは、あまりの物価の高さにたじろいたが、徐々に慣れてきて、近頃はまあこんなものかなと思い始めている。うちのガイドブック『旅行人ノート シルクロード』にも書いてあるが、ホテルの料金を安く押さえられれば、あとは驚くほど高いということはない。例えばこのクタイシの民宿では2食付きで1人35ラリ(約1750円)だ。ドミトリーならだいたいこれ以下で泊まることができる。
 だが、問題は交通機関だ。公共の交通機関であるバスやマルシュルートカ(乗り合いミニバス)、あるいは鉄道などは安い。だが、こういった公共交通は場所によっては便数が少なく、使いやすいとはいえないのだ。そうすると他にあるのはタクシーのみで、これを使うとやはり高い。高いけれど、教会をあちこちまわったり、あるいは僻地の村へ行くには、よほど時間が有り余っていない限り、タクシーしか手段はない。こういった観光客用のタクシー料金は、公共交通の10倍以上かかる。しかたのないことではあるが、単独のバックパッカーにはちょっと荷が重いかもしれない。

 このクタイシを最後に、おそらく手軽にネットにつなげられるところはないと思うので、コーカサスからのブログはこれが最後になると思う。明日からグルジアの山間部にあるスワネティ地方のウジュグリ村を目指す。そこから南下して陸路でトルコへ抜けて日本に帰ることになっている。
 この季節の南コーカサスは、日中はTシャツ一枚で過ごせるほど暑いが、乾燥しているので日陰は涼しい。夜はひんやりとして長袖が必要なほどだ。山間部で2000メートルを超えると、夜はかなり冷える。だが、旅をするにはちょうどいい季節かもしれないと思う。

 書き忘れたが、アゼルバイジャンのバクー空港の入国ビザ(一ヶ月)は無料(要写真2枚)、アルメニアの陸路入国ビザは21日間3000ドラムで米ドルでも払える(10ドル)が、ドラムが下がっているので、ドラムで払ったほうが得です。
 それでは、次は日本から。