『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』

 昨日はなんだか突然のように体調が良くなって、6月はもしかしたら調子が出てくるのではないかと期待している。
 『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』は2年前に封切られたドキュメント映画だが、先日ケーブルで放送されてようやく見られた。
 ニューヨークに住む郵便局員の夫と、図書館司書の妻。たいして金持ちでもない夫婦が大好きなモダンアートを買い集めて、ついには世界でも有数のミニマムアートコレクションになるという実話だ。
 ある日、夫妻の小さなアパートにぎっしりと詰め込まれた作品群を見に来たナショナル・ギャラリーのキュレーターはその様子に愕然とする。もし火事にあったら、もし熱帯魚の水槽が壊れたら、世界有数のコレクションはいったいどうなってしまう?
 それまで多くの美術館から寄贈の依頼を受けていたが、どの美術館でもコレクションが散逸するおそれがあり、夫妻はすべて断っていた。だが、コレクションを永久保存するという契約で、ついにナショナル・ギャラリーに全作品を寄贈する。当時それがいくらになるか正確にはわからないと学芸員はいっていたが、数億円になるのではと試算される。
 もちろんコレクションの一部でも売れば、夫妻は小さなアパートに暮らす必要はなかったのに、彼らはコレクションを売ることはまったくせず、自分たちの少ない給料をやりくりして、若い有望なアーティストの作品を安く買いあさってきたという。彼らの購買基準は、手軽な値段で買えること、地下鉄かタクシーで運べること、そして作品がアパートに入ることだったそうだ。そうやって4000点の作品が小さなアパートに詰め込まれた。
 ニューヨークのアートシーンでは知らないものはいない伝説的な夫妻の話は、アートに興味がなくても、一つのことに信念を持ってやりぬき、それを人生の大きな楽しみとする夫妻の物語として楽しめることと思う。
http://www.herbanddorothy.com/jp/