もう1週間たった?

もう1週間たったのか? 岡崎大五さんからプラネット・カフェ用の原稿が送られてきてびっくりする。うーん、私も何か書かなくちゃ。それにしても時間が経つのが早い。早すぎる。

本誌が月刊から季刊誌になって、3号目を作り終えた。なかなかペースをつかめないが、少なくとも月刊時代のように、次から次に締め切りに追われるということがなくなって、精神的な余裕はいくぶんできてきた気がする。とはいえ、予想していたよりは締め切りがすぐにやってくることもわかったが。

まあ、月刊時代は、編集作業を4人でやっていたのが、今は2人でやっていて、特集や依頼原稿は、編集もデザインもほとんど僕1人でやっているから、いくら時間が3倍になっても、忙しいことにかわりはない。ただつねにあった目前の締め切りが減ったというだけだ。そしてこれが大きいのだが。

旅行人が社員を何人か雇い、オフィスが広くなったときに、たいていの人は、会社が発展したことを喜んでくれたし、僕もうれしかった。本を何冊も出すようになり、売り上げも伸びて、それが会社の発展だと僕も思っていたし、多分それは間違いではないだろう。

だが、僕自身がやりたいこととは少し違っていた。僕は何も会社を大きくしたいと思って旅行人をやっていたわけではないのだ。会社なんか大きかろうが小さかろうがどうでもいいことで、自分が作りたい本や雑誌を出し、そしてデザインし、読者にそれを喜んでもらいたい。簡単に言えばそれだけのことである。会社が大きくなれば、そういうことがよりできるようになるのだろうと漠然と思っていた。

だけど、それは少し違っていた。会社が大きくなればなるほど(というほど大きくなったわけではないのだが)、本を作る作業以外のことがどんどん大きくなっていった。単純に言えば、動かす金額が大きくなればなるほど、金の管理に追われるのだ。この場合の金というのは、儲かった金というよりも借りた金のほうが大きいのだが、金の管理、在庫の管理、社員の管理などなど、管理が仕事になってくるのである。

社長がやる仕事とはそういう種類のもので、だから管理職というのだろうが、僕は管理の仕事なんかしたくないし、むかないことは始めからわかっていた。デザインなんかやってるヒマがあったら、金策をしろ、というのが、零細企業の社長の義務みたいなもんである。だいたい社長がスリップ(本に挟んである注文書のことです)の版下までやる出版社なんかない(と思うけど、零細出版社だったらやってるかな)。

だからといって、管理する仕事がなくなったわけではない。顧客管理をしなければ、定期購読者にきちんと本を送れなくなるし、金の管理をしなければ取り引き会社が迷惑する。だから、そういう仕事がなくなったわけではないのだが、会社が小さければ相対的にそういう仕事も縮小する。だから通常の業務は3人程度でやっていけるのだ。後ろ向きの考えといえばそうなんだけど、始めから大出版社を目指していたわけでもない僕にとっては、それで十分だと思っている(もうちょっと本が売れてくれれば申し分ないが)。

もちろん、僕は、これまでやってきたことを後悔しているわけではまったくない。本を書いてくれた著者や、働いてくれた社員には今でも心から感謝しているし、出会えたことは代え難い財産でもある。ある程度の規模で動かないと見えないこともあるし、やってみないとわからないことも多かった。働くことはおもしろいことだと思った10年余であった。これからもそうでありたいと思っているけれど。