泥棒騒ぎ

 
 先日、うちの近所で泥棒騒ぎがあった。未明4時頃、近所の家に泥棒が侵入し、怪しい物音を聞きつけた家人が取り押さえようとした」

 あわてた泥棒は逃げ出したのであるが、家人はご近所に向かって、「泥棒だ! 誰か来てくれ〜!」と叫んだ(多分警察にも電話したんでしょうが)。と同時に、勇敢にも泥棒を追跡し、とっつかまえようとしたらしい。服をつかまれた泥棒は、なおも逃げようとして、着ていた服が引きちぎられていく。
 叫び声に気が付いたご近所連は、外に出てびっくり。なにやら裸で走ってくるやせた男がそこにいたからである。「最初はストリーキングやってんのかと思ったわ」とはお隣りの奥さんの弁。

 近所の旦那さんたちが、その男をとっつかまえて縛り上げ、あえなく裸の泥棒は御用となった。そうしたら、侵入された家の人がいうに、「こいつは、この前もきやがったんだ」。泥棒とは同じ家に何度も入ろうとするものなのか。そのあとパトカーがやってきて、泥棒は連れて行かれ、騒ぎはようやくおさまったのである。

 だが、逮捕劇のあった現場のまっただ中にあった僕は、そんなことはまったく知らず、ぐっすりと眠っていた。朝、出勤しようと門を出たら、怪しい男が数人で、家の前の空き地でごそごそしていたので、何をやっているのかと警戒していたのである。そしたら、それは私服の警官で、昨夜の泥棒がその空き地に何か落としていかなかったかを捜索しているらしい。と、隣の奥さんが教えてくれた。

「朝はすごかったのよ〜。気が付きませんでした?」
「いいえ、ぜんぜん」
「あ〜ら、よかったわねえ。ぐっすり眠れて。あたしなんか恐くて、ぜんぜん寝られなかったわ」

 僕は、夜中に近所で誰かが叫んだとしても、絶対に目が覚めることなんかないであろう。それで目が覚めるほうがどうかしてると思う。しかし、門の前でパトカーまできてみんなが騒いでいるのに、ぜんぜん気が付かなかったというのは、ちょっと問題なんではないか。うちに泥棒が入っても、ぐっすり寝たままなんではないかという不安に襲われた。いや、隣の奥さんがいうように、目が覚めないほうが「しあわせよ〜」かもしれない。