もうすぐ出ます、『中国鉄道大全』

 えー、このところ、ず〜〜っとこればっかりやっていた本『中国鉄道大全』が、ようやく最終局面を迎えつつあります。表紙も決まりました。これです。

 この列車が何か、おわかりになる方は中国鉄道通といって差し支えないでしょう。答えは韶山7E型という電気機関車。中国の機関車には東風、東方紅、北京とかの型前が付いているが、韶山というのは、毛沢東の故郷なのですね。

 先般の追突事故で話題になった中国の高速列車は「和諧号」だったが、和諧というのは調和という意味だ。この名前は、官僚や党員が腐敗し、格差が拡大して社会不安が増大するのを押さえたい中国共産党の政治的スローガン「和諧社会」からきたもので、調和の取れた社会を目指すぞということらしい。そういえば昔、日本の大阪万博でも「人類の進歩と調和」がテーマだったなあ。今の方が格差社会な気もするが。

 中国の鉄道がすごいことになっているのは、皆さんもうすうす気がついていらっしゃることだろう。鉄道に疎い私でさえ、チベット鉄道のような大事業がどしどし押し進められたのには心底驚いたものだった。ゴルムド〜ラサ区間、5000メートルを超える世界最高海抜、1000kmあまりの路線が、わずか5年で(しかも1年前倒しした)完成したのだから、中国の鉄道建設への情熱はすさまじい。

 このような鉄道建設の情熱が、近年、中国全土に及び、中国各地に高速鉄道がどしどし建設されている。まあ、あまりにも前のめりになりすぎて、先日のような事故を起こしてしまったのだが、30年近く前、これ以上ないほど混み合った硬座で、座るところもなく一夜を過ごした私のような旅行者には、まさに隔世の感がある。

──2011年の時点で、91,000km(地方鉄道や都市鉄道などを除く)。ロシアの87,000kmを抜き、路線長では、とうとう1位のアメリ226,000kmに次ぎ世界第2位の鉄道大国に躍り出た。(本文より)

 アメリカが1位というのも少し意外な気がするかもしれないが、アメリカは貨物列車が多くて、実は世界ナンバーワンの鉄道大国なんですね(私も『アメリカ鉄道大全』を作って初めて知ったんですけど)。で、中国はそれに次いで世界2位というわけだ。これで世界1と2の鉄道本をうちから出せたのである。

 世界の順位はともかく、中国鉄道のおもしろいところは、ドイツ、フランス、日本といった世界の鉄道先進国から輸入した高速鉄道車両を国産化して走らせている一方で、炭鉱などに行くと、そこではまだ昔の蒸気機関車が活躍しているところだ。実は、世界の蒸気機関車ファンは、こぞって中国詣りをしているらしい。世界でも、蒸気機関車が現役でがんばっているのはもういくらもないのですね。

 私がおもしろいなと思ったのは、田舎の産業鉄道だ。多分こんな何の見どころもない田舎に行くのは鉄道ファンだけだと思うが、例えばこんな鉄道がある。四川省楽山市の郊外にある鉄道だ。
──古びたアパート群の谷間にある草壩駅を出発した列車は、裸電球のぶら下がったトンネルを抜け、美しい三連アーチ橋のかかった小川を越え、線路が敷き詰められた炭鉱の脇を通り、未舗装の道路の路肩併用軌道をそろそろ走り、民家の軒先をすり抜けると終点老砿に到着する。

 全長わずか3kmの小さな鉄道が、ゆっくりと軒先をかすめて走る姿を想像する。ちょっと乗ってみたいですねえ。

 こういう鉄道もおもしろいですよ。
 黒龍江省チチハルと古蓮駅を結ぶ列車がある。時刻表に掲載されているだけでも56駅に停車し、921kmに22時間以上かけて走る。「古蓮駅の一つ手前の漠河県駅にはオーロラ観光ができる北極村があり、ハルビンチチハルから観光列車がやってくる」のだそうだが、その先の古蓮までやってくる物好きはさすがにいない。鉄道ファン以外には。
 冬は零下50度になるそうだが、オーロラを見るのに、ここほど安上がりのところはないのではなかろうか。もちろん相当な苦労は避けられないが、ちょっと行ってみたい気がしますね。

 こういういろいろな列車などが紹介されていますので、鉄道ファンは是非お見逃しなく。発売は10月下旬(13〜20日頃)になると思います。よろしくお願いします。発売日が決定し次第、お知らせします。