本誌次号の制作がほぼ終了

 6月1日発売の本誌の制作が、今ようやく(ほぼ)終了した。次号はポルトガルの特集です。表紙はこんな感じになりました。

 私は1987年に初めてポルトガルを訪れた。それから24年たっての再訪だが、以前はリスボンポルトしか行かなかった。しかも、あちこちまわったなかで、ちょっと立ち寄ったという程度なので、実をいうと記憶にもほとんどない。今回のように1カ月かけてポルトガルだけを旅してみて、初めてポルトガルというのはこういうところだったのかと理解できた気がした。

 私は、西側ヨーロッパは、ほとんど全土が開発されているのじゃないかというイメージがあった。例えばインドでは、デカン高原内陸部の奥に入っていくと、車も入れないようなところに村があり、そこではまだ中世のような伝統的生活が営まれていたりする。インドの場合は貧富の差も激しいし、カーストによる差別もあるので、そのように「取り残された人々」が存在するのだ。

 もちろんポルトガルには、インドほどの格差はない。だが、国土もたいして広くない西側先進国で、まだモンサントのように巨岩を利用した家に居住している人々がいること自体が驚きだった。このような家はモンサントだけでなく、北部にはぽちぽちと点在しているらしい。私はモンサントでなぜ巨岩を利用したのか尋ねてみた。岩を利用した家は、きびしい暑さがしのげるというのが最大の理由だが、それなら日本では木材を使う。なぜ木を使わないのか。答えは簡単だった。岩ならタダだからだ。日本のように湿気が高くなければ、岩陰でも十分に涼しいのだ。

 それでも、部屋は狭くなるし、岩の形に合わせた間取りや高さになる。14世紀頃からこういう家が造られ始めたと土地の人はいっていたが、そういう伝統的な暮らしが今でも西側先進国に現存するというのが驚きである。クーラー付きの広い部屋で暮らすことを望み、岩の家を好まない世代はどんどん村を離れ(伝統的生活を望んでも職がないせいもあるが)、村は今もそこで暮らしている老人世代で終わることになる。今がまさに村の最後の数年なのだ。むしろ、よくここまで維持されたものだと思う。

 じっくりとヨーロッパを旅してみると、まだ私の思ってもいないことがたくさんあるだろう。何しろヨーロッパを旅するにはお金がかかるので、バックパッカー旅行をするのは楽ではない。取材でなかったらポルトガルを1カ月も旅するなんて難しい。ソブリン危機が叫ばれているので、もしかしたらユーロが100円を切る時代を迎える危険性がないわけではないが、そうなればそうなったで世界的経済不況になるかもしれないわけだし。

 てなわけで、次号は6月1日の発売。よろしくお願いします。