円高レイ安

 みなさまもよーくご存じのように、ただいま世界同時不況のまっただ中で、滅法な円高になってます。ドルもユーロもどんどん下がっていく最中に、本誌ルーマニア特集をつくっている私は、「ルーマニアは物価が高い」と書いた文章を、どうしたものかと悩んでいる。

 私がルーマニアに行ったとき、1ユーロ=165円で、1レイ=50円だった。これで旅をすると、ルーマニアの物価はかなり高い。例えばホテルはダブルの最低クラスで100レイ、安いところでも120〜150レイ程度はするのである。1レイ50円で換算すると5000円〜7500円ということになる。

 しかし、この円高でユーロは一気に下がっていき、現在の時点で116円。ルーマニア・レイはユーロにほぼ連動し、1レイ=31円となった。50円と31円では全然違う。前述のホテル代も、3100円〜4650円となって、それだったら「かなり高い」ともいえなくなってくる。全体の物価が一気に40%引きになったのだから、これはお得である。

 だが、もともと1レイ=50円が高すぎるという印象を、旅行したときに強く感じていた。ルーマニアのインフラは30〜40年前の日本のようなもので、現在のタイなどと比較しても劣っている。ホテルの設備も5000〜7500円も取る割りには、電灯が切れていたりスイッチが壊れっぱなしだったり、安宿感覚である。食事にしても、サンドイッチが4〜6レイするが、50円で計算すると、200〜300円と、日本とたいして変わらない。これはおかしい。

 ルーマニアの国民一人当たりのGDPは約6900ドルである。4600ドルという説もあるが、多い方の6900ドルでも年間80万円程度なのだ。そんな国で1レイ=50円の物価は感覚的に合わない。実は31円でもまだ高いという気がするのだが、少しは実態に近づいたといっていいだろう。勝手なことをいわせてもらうが、私の感覚では1レイは15〜20円ぐらいが適切だと思う。これだと150レイのホテルが2250〜3000円となり、実に快適な旅行が楽しめるのだ。円高だと日本の輸出産業が苦しくなるので、たかだか旅行者の都合で円高を望んでいるわけにはいかないんだが、それでも1レイ=50円はないと思うぞ。