行きたいところ、行ったところ

 私が当欄を頻繁にさぼるものだから、親切なMさんが、こういうネタで書いてみろと、わざわざ調べてまでネタを書き送ってくれた。ありがたいことである。
 そのひとつは7月11日付け朝日新聞夕刊の広告で、朝日旅行が発表したアンケート「行きたい旅行地」である。ご覧になった方もいらっしゃるだろう。相撲番付でランク付けしてあったが、ランクは下記の通りである。

1:イタリア
2:オーストラリア
3:フランス
4:ハワイ
5:アメリ
6:スイス
7:カナダ
8:ドイツ
9:イギリス
10:スペイン
11:中国
12:ニュージーランド
13:韓国
14:オーストリア
15:エジプト
16:オランダ
17:トルコ
18:ベトナム
19:台湾
20:ロシア

 20位までだと、ヨーロッパが9カ国(ロシア含む)と圧倒的に強く、まるでWカップのようだ。アジアは4カ国。オセアニア・太平洋地区が3カ国。北米2カ国。中東2カ国(トルコは中東に区分)。
 イタリアやオーストラリアが人気なのはよく知られているが、アジアで一番が中国なのはちょっと意外だった。中国の反日運動で旅行客は中国を避けているといわれたが、そうでもなかったようだ。
 それでは実際にいったのはどういう国なのか。それが次のデータである。

日本人渡航先ランキング(2003年)

1:アメリカ (5位:行きたい国ランク)
2:中国(11位)
3:韓国(13位)
4:タイ(21位)
5:香港(25位)
6:台湾(19位)
7:ドイツ(8位)
8:オーストラリア(2位)
9:イタリア(1位)
10:フランス(3位)
11:インドネシア(バリ島で30位)
12:シンガポール(29位)
13:フィリピン(圏外)
14:スイス(6位)
15:イギリス(9位)
16:スペイン(10位)
17:オーストリア(14位)
18:マレーシア(42位)
19:ベトナム(18位)
20:ニュージーランド(12位)

 実際に行った国・地域になると、アジア勢がぐっと勢いを取り戻し、20位中10カ国・地域と半数を制している。アメリカが1位なのは、行きたい国ではハワイ、グアムなどが別々の区分だったのが、ここでは同じになっているという事情もあるだろう。したがって、中国が1位かもしれない。つまり上位6位までを、グアム/ハワイ、上海/北京、ソウル、バンコク台北と仮定すると、どれも片道7時間以内に行ける場所なのである。
 ということは、遠くても行った国の1位は、アメリカかもしれないが、ドイツであるかもしれない。他のヨーロッパ諸国はずるずると後退し、1位のイタリアもあわれ9位、3位のフランスは10位と、かろうじてベスト10圏内。6位のスイスが14位で、7位のカナダは圏外へ消え去った。
 しかし、なんでドイツなんだ(この際アメリカは無視するが)。Wカップは今年だし、2003年のドイツは日本で流行っていたのか。
 さらに、渡航先ランクで13位に入ったフィリピンは、行きたい国ランクでは47位内にも入っていなかったところである。というぐらい行きたいとも思わないところに、なんでこんなに(約32万3000人)行くのであるか。憧れはないけど安くて近いということか。
 というわけで、全般的な傾向として導き出されるのは、憧れは、物価は高いけど遠い先進諸国。実際に行けるのは、近くて安い近隣諸国ということになる。ああ、なんという現実的かつ凡庸な結論であろうか。