安物の椅子

 この前の日曜日に、近所に住む田中真知夫妻がわが家に遊びにきた。ダイニングで座って話をしていると、バキバキという音がして、真知さんの身体が下に沈んでいった。なんと、椅子が壊れてバラバラになってしまったのだ。

 真知さんの名誉のために書いておくと、真知さんの体重が重かったせいではない。身長180cmに近い男だから、軽くはないだろうが、太っているわけではないのだ。これは壊れる椅子の方が問題だ。まだ買ってから2年もたっていないのに。

 一時、インドネシアの家具が流行ったのをご存知だろう。合板ではない、ちゃんとした木をつかった家具が安いというのでブームになった。僕もそういう椅子が欲しいと思っていたのだが、それでも都内で買うと一脚4万円ぐらいはする。4脚買うと16万円だ。とても手が出ないのであきらめていた。

 それが、半値以下で手に入る店を見つけた。都内ではなく、大田原市というところだ。そこまでわざわざクルマで行って買い付けた。そのあといろいろトラブルがあったが、それを説明してもしょうがないので省略するが、そうやって入手したインドネシアの椅子4脚だった。

 バラバラになった部品をよく見てみると、ほぞなんか形もいびつでいいかげんに彫ってあるし、上手く合わなかったほぞとほぞ穴の隙間を、パテを埋めてごまかしている。そんなところが何カ所もある。使っている木材も節目だらけで、今回の破壊も、節目から起こった亀裂が全体に及んだのだ。やはり安物は安物だったのだ。こんないいかげんな「手仕事」だったら、大量工業製品である2000円のパイプ椅子の方がずっとマシである。いやはや、典型的な安物買いの銭失いでした。