日記

 東北地方にお住まいの女性の読者から手紙が来て、編集部が沸き立っていた。何事かと思っていたら、これは何ですか!? と、その手紙を突きつけられた。手紙をくれた東北の読者は、最近旅行人を読み始めたばかりらしいのだが、発行人の名前を見てびっくりしたという。発行人がなんと「2年前に出会った彼」だというのだ。

 ちょっと待て。発行人って、わたしのことじゃないか。2年前に東北在住の女性に出会った記憶はないぞ。しかし、わたしの記憶力は今やないも同然。それでは2年前に何をしていたかと問われても、ぜんぜん思い出せない。ニューヨークに行った時じゃないか? との疑義が出され、ニューヨークに行ったのは2年前だったか? しかし、ニューヨークで出会った日本人女性といえば、昔からの知り合いであるKさんだけで、他には記憶にない。もしかしたら本当に忘れてしまったのかもしれない。ああ、どうしよう。そんなこと忘れたくな〜い。

 と、思っていたら、編集の田中元が、編集長がニューヨークに行ったのは去年ですよ、2年前は海外へは行っていませんと、きっぱりと断言してくれた。なんでそんなことを覚えているのかと尋ねると、2年前というのは自分が旅行人に入社した年だから、あのときは旅行人ノートを作るのに追われ、事務所の引っ越しもあったりと、海外旅行どころではなかったというんである。なるほど。そういえばそうだったか。

 というわけで、ヒジョーに残念なことに、僕は東北在住の読者に「彼」と呼ばれるような出会いをしていなかったのだった。罪は晴れたが、残念である。でも、勘違いですから、そこんとこよろしく。