未公開映画を観るテレビ

 以前も当欄で書いたが、再び「松嶋×町山 未公開映画を観るテレビ」について。この番組はTOKYO MX TVという東京のローカル局でやっているので、関東エリア以外の方は観られないかと思うが、今これまでこの番組で放送された39作品を、ネットで有料公開している。
http://www.mikoukai.net/

 私もすべてを観ているわけではないが、なかなかおもしろいドキュメンタリー作品が多い。私が観た中のベスト5を紹介しよう(面白いのが多いので5本に絞るのは難しいが)。

第5位:ライト・テイクス・アス〜ブラックメタル暗黒史〜
 ブラックメタルというジャンルがあるのも私は知らなかったが、音楽的にはへヴィメタルの一種らしいが、ブラックメタルバンドのメンバーを中心にした反キリスト集団「インナーサークル」が結成され、この連中が教会を燃やしたり、果ては殺人まで犯してしまう。ヨーロッパ社会では、反キリスト主義がいかに過激思想になるかが少し理解できた。

第4位:レリジュラス
 あの問題映画「ボラット」のラリー・チャールズが監督。コメディアンのビル・マーが世界中の宗教に突っ込みを入れ歩くという無謀な映画。なにしろエルサレムの正統派ユダヤ教徒のところまで出かけていって、信仰に茶々を入れるというんだからすごい。アメリカでは聖書通りに歴史を表現するために、恐竜に鞍を乗せている博物館があるというのには笑う(聖書では人間と恐竜は同時期に神が創造したからというのがその理由)。

第3位:イエスのショッピング
 この映画のことは前にも書いたので、そちらをどうぞ。
 http://d.hatena.ne.jp/kuramae_jinichi/20091116

第2位:ジャンデック
 謎のミュージシャン、ジャンデックの紹介映画。町山氏によると、こういう音楽はアウトサイダー・ミュージックと呼ばれているらしいが、これまでまったく音楽を聴いたことのない人間に、ギターを渡して歌ってごらんといったらこういう音楽になるんじゃないかという音楽をこのジャンデックさんはレコードにして発売している。これまで何十枚も発売し続け、あまりにも奇妙な音楽なので話題になった。それをちょっと聴いてみるだけでも一見の価値あり。

第1位:イエスメン#1 #2
 イエスメンとはアメリカのコメディアン2人組の名前だが、2本放送されている。この人たちはとんでもない仕掛けを実行する。例えば、インドのボパールで爆発事故を起こして未曾有の大惨事を引き起こしたユニオン・カーバイト社は、2001年にダウケミカル社に吸収合併されたが、ダウケミカルは現在でもインドの被害者にほとんど賠償を行っていない。そこでイエスメンはダウケミカルの広報になりすましてテレビに出演し、ダウケミカルはインドに多額の賠償を行うと勝手に発表してしまうのだ。もちろん大問題になるが、それが彼らの目的でもある。このアイディアと行動力には驚嘆する。

 最近放送された「DEFAMATION」もなかなか面白かった。これは反ユダヤ主義の正体をユダヤ人自らが暴こうとする映画で、重いテーマだが飄々としたドキュメンタリーに仕上がっている。

 今後もこの番組にはますます期待したい。