世の中の機械がどんどん進んでいく

 私のような中年がぼーっとしているあいだに、世の中の機械仕掛けはどしどし複雑化し、新しくなっていく。この前、『チベット』の執筆者である長田さんが地図と写真データを事務所にもってきてくれた。それで取り出したのが小さなスティックである。メモリースティックというものらしい。それをUSB接続すると1ギガあるスティックから地図や写真が簡単に取り出せるというわけだ。CDに焼く必要もなく、MOも必要ない。小さなスティック一つだ。

 しかし、いったいそんなものを誰が必要とするのだろうか。会社員とか、あるいはわれわれのような編集者やデザイナーなら、仕事に必要なデータ類を手軽に持ち運べて便利かもしれない。だが、長田さんによれば、そういう仕事向きばかりとは思えないほど、量販店で手軽に販売されているそうだ。いったいこんなものを日常生活のどこで必要になるのだろうか。

 おそらくこれを読んでいるほとんどの方がご存知であろう「i-pod」というオーディオ機器がある。あれなんかも僕には長い間、どのように使用されるのか理解できなかった。もちろんイヤホンを突っ込んで音楽を聴くという程度のことはわかる。わざわざインターネットからコンピューターにダウンロードし、それをさらに「i-pod」に移して聴くということが理解できなかったのだ。それだと音のデータを移し替えるだけで、ジャケットも歌詞カードもないではないか。

 しかし、それが今や大きな流れになって、アメリカではタワーレコードが倒産したというから驚く。ということは、もし日本でもそうなったらCDという形の音楽を買えなくなってしまうのか。といえば、まあ、そんなことはなくて、今でもアナログレコードが残っているように、CDも残るだろうし、だいたい日本はアメリカと違ってCDは再販価格商品なので大丈夫だろうといわれている。それでも、音楽をダウンロードするのが主流になれば、どうあがいてもCDは少数派になるのは避けられない。

 レコードやCDは一度買えば捨てない限り手元に残る物品だ。だが、音楽をダウンロードしてデータを「i-pod」で聴く場合、聴かなくなった音楽は消去するのだろうか。あるいはハードディスクで眠っているのだろうか。コンピューターは寿命の短い機械だが、ハードディスクなんていきなり壊れてしまうものだから、そうなったらデータはもう救えない。なくなってしまうだろう。今の音楽とは、それでいいという程度のものなのだろうか。

 などということを考えながら、最近、仕事をしながら聴く音楽をインターネットラジオに切り換えられないかと思っている。なにしろ仕事中に流れるラジオ放送のバカさ加減というか、くだらなさ加減というか、つまらなさ加減というか、どうしようもなさに近頃急速に耐えられなくなりつつあるのだ。聴いていると腹が立ってくるので、これはまずいと思う。

 とはいえ、インターネットラジオなんてどういうものがあるかほとんど知らないのだが、コンピューターにおまけで付いていた「i-tune」を見てみると、多彩なジャンルの様々な音楽が放送されている。ときたま広告らしき声が英語で聞こえる以外、音楽を流しっぱなしである。そろそろなんとかしなくちゃなと旧式コンピューターを動かしながら考える今日この頃だ。