横谷“ブッダ”宣の4年間

 昨日(6月22日)は午後2時から、西早稲田堀田あきお&かよさんのトークイベントがあり、それに参加したあと、午後7時からお茶の水で横谷宣さんと田中真知さんの対談を聞きにいくという忙しい一日だった。どちらの会場も大入満員で、私のように2つの会場をかけもちする人もけっこういた。

 堀田さんのトークイベントは、私も話をする立場で、たくさんおいでくださり、あらためて御礼申し上げたい。かよさんはトークイベントは初めてとのことだったが、その見事な仕切り方はとてもそうは見えなかった。あっという間の2時間だった。

 堀田さんの原画展も同時に開催されており、原画展は26日(水)まで開かれている。会場には毎日堀田さんが在廊していらっしゃるので、トークにいらっしゃれなかった方は原画展の方へぜひどうぞ。無料です。
http://www.hoshien.or.jp/asian_40th/program/1306_talkshow.html

 夕食をとって、それからお茶の水のギャラリー・バウハウスで行われた横谷宣・田中真知両氏の対談を拝聴する。横谷さんのことをご存知ないかたも多いと思うが、彼は写真家で、4年前にもここで初めての個展を開催した。その作品はかなりの評判を呼び、無名の新人の初めての個展で、展示した作品が数多く売れた。これは異例中の異例であるそうだ。

 で、ここからが本題。ところが彼は注文を受けた写真のプリントに、なんと4年もかかったのだ。これも異例中の異例といえるだろう。いったいどういうわけでそういうことになったのか。ようやくプリントが完成し、それらがお客の元に送り届けられ、新しいプリントを含めた2回目の個展開催までこぎつけたのを機に、その釈明対談が行われたというわけだ。

 その詳しい内容は専門的すぎて完全に理解することはできないのだけど、一言でいえば、彼の場合、印画紙も自作するので、それがパーフェクトに仕上がるまで紆余曲折、山あり谷ありの長い行程を経なければならなかったということだ。4年はあまりにも長すぎるのだが、だからといって納得できない作品を送り付けることはできなかった。

 しかし、こうなると、どう考えてもペイしない。採算度外視というより経費のことは初めから頭にないんだね。この人の話を聴いていると、なんといえばいいか、次元の違うところで生きているという感じがする。私は10年ぐらい前に彼と会って話をしたことがあるが、そのときも彼は、金を稼ぐことを考えるより、金を使わないことを考えるほうが楽しいというようなことをいっていた。

 今回のトークでも、愛用のカメラについて質問されると、彼は今はカメラを持っていないという。なぜか。この4年間、プリントの制作に没頭していて写真はまったく撮らなかったので必要なかったというが、カメラが一台も手元にないという写真家が他にいるだろうか。

 いつも愛用しているのはニコンFEだという。このカメラはいつもオークションで8000円程度で売り買いされているので、要らないときはオークションで売り、必要になったらまたそれぐらいで買うのだそうだ。「だからまあ質屋に入れてるようなもんです」といって笑う。

 このニコンFEはすでに製造中止になった古いモデルである。私が想像するに、そうであればそのカメラを熱心に愛用する写真家は、手放すどころか、予備機として数台を確保しておくのが普通なのではないだろうか。それを彼は「質屋に入れるようなもの」といって手放してしまうのだ。横谷さんはほとんど悟りをひらいているのではないか。横谷“ブッダ”宣。

 写真についての解説は私はもうしない。4年前にちょっと書いたが、田中真知さんのブログをお読みいただくほうが適切である。ギャラリー・バウハウスであなたはブッダの写真をご覧いただけるはずである。

田中真知さんのブログ
http://earclean.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/4-6abf.html
ギャラリー・バウハウス
http://www.gallery-bauhaus.com/130605_yokotani.html