シェールガスが有望だなんて誰が言った?

 今日は更新しよう、明日は書かねばと思っているうちに、あっという間に2週間あまりの日々が過ぎてしまった。どうもすいません。ただいま、問題の『中国鉄道大全』の制作に追われ、それが次号本誌の制作とじりじりと被りはじめて焦る日々なのだ。

 さて、私は先日、当欄の「原発がなくなったら」(2011-06-29)で次のように書いた。
──シェールガスは掘削技術が向上して年々生産量が上がっており、埋蔵量も膨大なので枯渇する心配はまったくないらしい。
 だから、原発に替わるエネルギーは天然ガスシェールガス)になると世間ではいわれているというようなことを書いた。

 しかし、先日NHKで『GASLAND』というドキュメンタリーを見て驚きましたね。「シェールガスは掘削技術が向上して」などというときの技術の向上とは、水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)とよばれるもので、「深いシェール岩層に大量の水や砂、化学物質を一気に注入して、内部にあるガスを抽出する掘削方法」である。

 問題は「注入した大量の水や化学物質を回収できず、地下水脈に流れ込んで水質が汚染される危険がある」ことがあるそうだが、『GASLAND』によれば、地下水脈には天然ガスまで入り込んで、ガス田付近の家では、なんと水道から水とガスが噴出し、火を着けると水道の水が燃えだしてしまうのである。ちょっと長いので、はしょりながらでも見てください。これがそのシーンです。

──実際に、アメリ東海岸の採掘現場周辺の居住地では、蛇口に火を近づけると引火し炎が上がる、水への着色や臭いがするなど)が確認されるようになり、地下水の汚染による人体・環境への影響が懸念されている。採掘会社はこれらの問題と採掘の関連を否定しているが、住民への金銭補償・水の供給を行っている。(Wiki

 ガス田から噴出する有毒なガスが大気を汚染し、地下水に流れ込んだ化学物質は飲料水を汚染するという最悪の状況なのだ。

 アメリカではシェールガスのブームが訪れていて、全米各地でガス田がつくられているが、「特に、ウエスバージニアオハイオペンシルバニア、ニューヨークの4州にまたがるアメリカ最大のシェール層であるマーセラスシェール層では、ガス開発が急増し、それに伴い多くの住民が喘息や頭痛など健康被害を訴えるようになった」(http://www.nygreenfashion.com/html/learn/hydrofracking.html)という。このガス田開発には、日本の三井物産も出資している。ニューヨーク市民は開発に大反対しているらしい。ハンバーガー屋のコーヒーが熱すぎてヤケドしたぐらいで訴訟を起こすアメリカ人が、なんでこういうことをやられっぱなしなのか不思議でしょうがない。

 それで、ガス会社(そのひとつがまたもやチェイニーのハリバートン社)は、こういった反対運動に対して、こういう動画を流している。YouTubeで見られるものだが、この動画に対するコメントはできない設定になっているところが笑える。反対運動の主張にいろいろ反論しているが、白々しい動画とともに、まったく説得力を持っていない。

 こうやってみると、エネルギー問題というのは、これがダメならこれでいいんじゃない? というような簡単なものではないのですねえ。