ポルトガルの旅(4)北部の田舎

 ギマランイスからさらに北へ移動し、ポンテ・デ・リマという町に宿泊した。ポンテ・デ・リマとはリマ川の橋という意味じゃないかと思うが、人口2000程度の本当に小さな町だ。ここにはローマ時代の橋が架かっていて、それが最大の見どころで、それ以外は特に見るべきものはない。しかも、ここらへんには他にもローマ時代の橋が残っているところがいくつもあるので、ポンテ・デ・リマじゃなきゃこれは見られないというほどのものでもない。

 だが、これがなかなか趣があっていい町なのである。私にとっては、それまで旅してきたポルトガルの地方都市の中では、この何もないポンテ・デ・リマが最も気に入ってしまった。小さな町の中に小さな中世の要塞の一部が残っていて、その周囲に数軒の商店、レストラン、カフェなどが並んでいる。ただそれだけの町だが、横を流れるリマ川で釣りをする人や、人々の買い物の風景を眺めていると、不思議と落ち着いた気分になった。

 とはいえ、この田舎町に、ただのんびりするためだけに滞在するほど私もヒマではない。ここに来たのは、さらにその奥、というか東にある国立公園の中にある村を訪ねるためだ。ポルトガル北部には「エスピゲイロ」と呼ばれる高床式の穀物倉庫があるのだが、その倉庫群のある村が国立公園内に2つあり、ポンテ・デ・リマはその村へ行くためのゲートになる。といっても、ポンテ・デ・リマから国立公園の村へ行くバスの便はほとんどない。1日1〜2便がいいところだ。それではとてもまわることはできないので、意を決してレンタカーを借りることにした。

 私は一応もしものために国際免許証を携えてきていたが、なにしろオートマ免許である。オーストラリアの時はそれでもなんとかなったが、ポルトガルは日本と逆の右側走行だ。レンタカー屋でオートマ車はないかと尋ねてみたが、予想通り「ない」といわれ、しょうがなくマニュアル車プジョー307を借りた。右手でギアを操作するのは初めての体験だが、間違っても左側車線に突入しないように、助手席の小川に常に「右側!右側!」と注意喚起してもらいながら、恐る恐る国立公園に向かって出発したのだった。

 走り出してしまえば、ポルトガルの田舎で国立公園に向かう車などほとんどなく、いわば無人の道路を独占して走るようなものなので、なんということもない。制限速度50キロの道路を50キロで走っていると、たまに来る後続車はどしどし追い抜いていってくれる。オーストラリアと違ってカンガルーが道路に飛び出してくる心配もない。いちど道を間違えてスペインに入ってしまったが、EU圏は国境に何もないので、異なる国に入ったこともなかなか気がつかない。そうやって2つの村をまわって(走行距離135キロ)、無事にポンテ・デ・リマに帰り着いた。ほっとしました。

 そのエスピゲイロというのはこういうものである。細長い穀物庫だが、現在でもこの地方では使用されており、石ではなく木でできた新しいエスピゲイロもあった。

 このポンテ・デ・リマからポルトへ南下し、今このブログはそのポルトで更新している。ポンテ・デ・リマと打って変わってポルトポルトガル第2の大都会である。ひさしぶりの都会というだけでなく、ポルトは本当に美しい街で、まわるところも多くなって4泊した。明日はコインブラに移動する。