アメリカの鉄道を見る

 ただいま必死に『アメリカ鉄道大全』(7月30日発売)を制作中。発売が2カ月も遅れて、読者にも著者にも大変ご迷惑をおかけしております。申し訳ありません。

 私は鉄道マニアではないし、鉄道ファンでさえなく、ましてやアメリカ鉄道などぜんぜん知らない。アメリカの鉄道といえばアムトラックぐらいしか知らないので、本書に登場する数々のディーゼル機関車、貨物列車、蒸気機関車などのバリエーションに、ただただ驚くばかりである。

機関車がかっこいいというのなら多少は理解できる気がするが、本書ではさまざまな貨物列車まで写真とデータで紹介されている。例えば「2連接自動車輸送専用貨車オート・マックス」なんてのがあって、長さ44.3メートル、高さ6.15メートルもある巨大な貨車だ。好きな人はこういう貨車がやってくるのを砂漠みたいな場所で待って、写真で撮影しているのだと思うと、さすがにマニアはすごいよなあと思う。アメリカの貨物列車は正確にいつ通るかわからないらしいので、待つのも大変だ。スペースシャトル用部品輸送専用列車なんて貨車まであるそうだ。

 私は30年ほど前にグレイハウンドバスに乗ってアメリカ各地を旅したことがある。そのとき、貨物列車の通過で踏切が閉まり、通り過ぎるのを待たされたのだが、日本では考えられないほど長く、これがアメリカなんだなあと実感した記憶がある。なにしろ通り過ぎる貨車の先頭と最後尾の両方が、カーブで曲がっているので見えないほど長いのだ。途中から貨車の数を数えたけれど、100両以上だったと思う。マイルトレインといって1マイル(1.6km)もある列車は珍しくないそうだ。

 本書を読んでいると初めて知ることばかりだが、アメリカ鉄道撮影地三大名所というのがあることも初めて知った。いったい鉄道を撮影するのに名所とはどういう意味なのか。そのひとつに「テハチャピ峠」という場所があり、そこの写真を見ると、なんとあの長い長い貨物列車がとぐろを巻いて走っている。峠越えをするのに、まっすぐ越えられないので、ループになっているのだ。列車が長いので、そのループを登っている様子がまるで蛇がとぐろを巻いているように見えるのだ。だからみんな撮影するのですね。

 この様子が衛星写真でばっちり見える。アメリカ鉄道はグーグルよりBingの地図のほうが探しやすい。


 マニアでなくてはつくれないのがこの『アメリカ鉄道大全』。著者の松尾よしたか、佐々木也寸志のお二人は、列車の写真の撮り方も美しくてツボを押さえている(それがわからずに勝手にトリミングして怒られてもいるが)。マニアでなくても、いろいろな機関車や貨物列車の写真を眺めているだけでも楽しい本に仕上がっていますので、どうぞお楽しみに。さて、作業に戻らなくっちゃ。