インドでまた新しい州ができる

 年も押し詰まって、インドから衝撃的なニュースが飛び込んできた。なんと南インドのアーンドラ・プラデシュ州から新しい州としてテランガナが分離独立するという。アーンドラ・プラデシュ州といえばハイデラバードを擁するが、ハイデラバードはこのテランガナ新州の範囲内にある。インド・ハイテク産業の中心地の一つであるハイデラバードはいったいどうなるのだろうか。

 テランガナ独立の記事はこれ。
 インド、州昇格を容認 テランガナ 他地域の運動刺激(12月12日7時57分配信 産経新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091212-00000052-san-int


 アーンドラ・プラデシュ州は大きく分けて3つの地域から成っている。海岸沿いのアーンドラ地方と、南部内陸部のラヤルシーマ地方、そして北部内陸部で今回独立しようとしているテランガナ州。
インド独立後の1953年からテランガナを除く前者2地域でアーンドラ州を形成し、州都はラヤルシーマ地方のクルヌールという町だったが、1956年にテルグ語圏をひとまとめにしてアーンドラ・プラデシュ州が形成された。

 ネットの記事をいろいろ読んでみると、テランガナは他の地域と異なる言語や文化を持つことから、もともとアーンドラ・プラデシュ州に参加すること自体に反対が強かったらしい。近年ではIT景気に湧くハイデラバードを除くと経済的に立ち後れており、他の二つの地方に比べても開発が遅れているということで地域住民の不満は高まっていた(テランガナに限らず州人口の約94%が農業労働や建設労働などに従事するこの州は、そのほとんどが貧困状態にあるといわれている)。

 2004年に行われた州議会選挙で、与党テルグ・デサム党(TDP)が国民会議派に大敗する。TDPはテランガナ独立には消極的だったので、テランガナ地域で票が得られなかったことは当然だったが、他の地域でも惨敗した。このときはTDPと連合政権を組んでいたインド人民党(BJP)も、今年になってテランガナ独立を支持することを打ち出している。

 今回の独立は、有力政治家がハンガーストライキを行い、身体の調子が悪くなってきたことから、混乱を避けるために独立を認めたということになっている。その程度の理由で独立を認めたら、今後インドでは独立を目指す地域が続々と現れてくるんじゃないかと思うが、実際は、近年の干ばつで疲弊した農村に対して有効な手を打てなかったTDPの失政、不人気が、テランガナ独立の機運と合流してしまった結果だろうと思われる。

 しかし、本当にこれでテランガナが州として独立したら、いったいハイデラバードはどうなるのか。もちろん他の2地域はおとなしくハイデラバードをテランガナに進呈するつもりはないだろう。「中心地ハイデラバードを失い、経済的不利益を被ることを恐れた他地域で抗議運動が発生」(共同通信)しているという報道もある。連邦直轄市にでもするしかないんじゃないか。記事によれば、独立を求めている地域は他に9つあるというが、西ベンガル州で「ゴルカランド州」、マハーラーシュトラ州で「ヴィダルバ州」、ウッタル・プラデーシュ州で「ハリット・プラディシュ州」の独立運動が起きているそうだ。

 選挙公約で地域の独立を認めて票を獲得して、国民会議派はチャッティースガル州やジャールカンド州を作ってきたが、こんな方法で選挙をすることがいかに国を危うくするかを如実に示している。地域の対立を利用して権力を得ようとする政治をインドがやっている限り、インドに明るい未来はないだろう。世界最大の民主主義国家といわれるインドだが、この民主主義がどう作用するか、世界最大の実験といえなくもない。