数学者の難しい予想

 今年もはや12月。残り少なくなってきましたねえ。

 さて、数学、物理はまったくダメという超文化系の私だが、なぜかポアンカレ予想なんていう数学理論の本を読んだことがあったが、それは数式がほとんど出てこなかったからであり、ポアンカレ予想にとりつかれた数学者たちの生き方が壮絶だったからだ。もちろんポアンカレ予想が理解できたわけではない。

 先日はNHKで『魔性の難問〜リーマン予想・天才たちの闘い』という番組をやっていて、これにまた見入ってしまった。また予想だ。数学者は予想が好きで、自分が答えを導き出さないまま、これはこうなってるんじゃないかなと発表して、それでお亡くなりになってしまったりする。後に残された数学者は、これがもし本当だとしたら大変なことだ! と考えて、その予想を必死に解き明かそうとする。

 もちろん、後世の数学者が、この予想は解き明かすに十分な価値があると判断した予想だけが有名な予想なのだが、このように解き明かされていなかった重要な予想のひとつがポアンカレ予想で、これはロシアのグレゴリー・ペレルマンによって証明された。重要な予想には解き明かした者に100万ドルの賞金が与えられることになっていて、これを「ミレニアム懸賞問題」というのだが、このうち未証明問題が現在6問残っている。

 6問のうちのひとつがリーマン予想。ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが予想した理論である。どういう理論かというと、……私がこんなことを解説できるわけがないのだが、一応説明しないと話が進まないので試みるが、意味はわからない。1と自分以外の数で割り切ることができない数を素数というが、その素数は、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29というふうに、ずーっと並んでいく。で、この素数が、どのような規則性を持って現れてくるのかは未だに明らかになっていない。

 それで、この素数の分布をリーマン博士はゼータ関数で表した(意味不明)。関数だから、それをグラフにすると波形の曲線になりますね。その波が0になる点は一直線に並ぶという予想であるらしい(これも意味不明)。それがリーマン予想だ。ぜんぜんわからないですね。すいません。

 そんなことを解き明かすことに、何の意味があるのか。それが解き明かされたからといって宇宙の平和が失われるわけではない! というのは数学のわからない私のような人間の浅慮で、なんとなんとこのリーマン予想が証明されると、宇宙の神秘が明らかになるというから驚きである。素数の羅列にどういう宇宙の神秘が隠れているというのか。

 この番組では、この秘密が1972年に二人の科学者によって明らかになったことが紹介される。リーマン予想は証明されてはいないが、自然数の中に素数がどのくらいの「割合」で含まれているかを述べる素数定理は明らかになっているらしい。その1972年、数学者モンゴメリーと物理学者ダイソンが大学のカフェで、リーマン予想に関する雑談をしていたとき、数学者のいう素数定理の公式を物理学者が聞き、それが原子核のエネルギー間隔を表す式と一致することに気がついてしまったのだ。単なる素数の分布が、原子核のエネルギー間隔と一致するとなると、この数字には宇宙の神秘が隠されているに違いない! えらいことである。

 しかし、残念ながら、それから37年たった今も、いまだにリーマン予想は解き明かされていない。もしこの予想が証明されれば、実は銀行口座が危なくなるらしい。なぜなら、素数が現れる規則性がわからないということに着目して、現代の暗号は組み立てられているからだそうだ(意味不明)。だから、もし素数が現れる公式が完成してしまうと、暗号はたちどころに解き明かされて、世界中の銀行口座からオンラインで預金が引き出されてしまうというわけ。

 というわけなので、このリーマン予想を解き明かした数学者は、私が解き明かしたぞなどと宣言して100万ドルを獲得するより、秘密にして世界中の銀行口座からお金を引き出す方がよほど金が入るというわけですね。ようやくわかりやすい話になったなあ。

 この本は、以前NHKでやったポアンカレ予想に関する『100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎』を書籍化したもの。ポアンカレ予想を証明したロシア人数学者グレゴリー・ペレルマンの半生が描かれている。文化系向けの数学の本といえますね。おもしろかったです。