『わけいっても、わけいっても、インド』
いよいよ今日が私の新刊『わけいっても、わけいっても、インド』の入稿日。ようやく作業が終わって、あとは印刷屋さんにデータを渡すだけ。結局、全体のページは288ページで、そのうちカラーページが96ページ! 最近の私の新刊はカラーが多いのだが、それは一昔前と較べると4色の印刷が安くなったからなのだが、そのかわり紙代がぐんぐん上がっているので、うーん、結局差し引きちょっとだけマイナス(コストが安くなった)という程度かな。
今度の本は、たぶんインドを旅したことがある方でも、行ったことがあまりないんじゃないかという地域ばかりを取り上げている。ムンバイやコルカタもちょっとは出てくるが、そこらへんは目的地ではない。第1章のビハール州のミティラー地方、第2章のグジャラート州の話は本誌に書いたものに書き加えた文章だが、メインの第3章はまったくの書き下ろし。ムンバイからインドに入って、ムンバイのちょっと北にある「タラサリ」へ「ワルリー画」を見に行き、そこからマディア・プラデーシュ州、チャッティースガル州、オリッサ州といった具合に、インドの中央部を横断する旅となった。アディヴァシーと呼ばれる先住民のアートを探し求めてあちこちかけまわった。
それで、アディヴァシーのアートはあったのかというと、あったんである。これが実に美しいもので、アートが美しいだけでなく、その環境がまた美しかった。そういうアートや風景をなるべくたくさん読者にお見せしたいと思ってカラーページが多くなってしまった。
そして、そういうアートに出合うことができたのは、ほとんど何の情報もないうえにヒンディー語も現地の言葉もぜんぜん話せないわれわれに、土地土地の人々が助けてくれたおかげだった。その親切さぶりは信じられないほどで、これまでインドではさんざんだまされたり、ぼられたりしてきたけど、こういうインドってのがあるんだなとつくづくわかった次第。さすがに土地の人も、ヒンディー語も話せないで、よくもまあこんな田舎にやってきたなとあきれていたが、行くだけなら列車やバスに乗ればいいだけなので簡単だ。あきれた人が助けてくれたおかげで目的を達成することができたというわけですね。
それで、この本『わけいっても、わけいっても、インド』は9月1日発売(本体価格2000円+税)ですが、最後の最後までカバーデザインが決まらずに往生した。前のブログで、最初のデザイン案をお見せしたが、結局あれから次のようにデザインが(ついさっき)変更になった。最初の案からここになるまで、10通りぐらい変化しているのだが、それほど変わったようには見えないかもしれないですね。
実に細かいところなんだが、タイトルの文字に手間がかかっている。ちょっと目にはわからないかもしれないけど、ゴシックMB101Hという書体に手を加え、角を取って丸みを付けたり、文字を少し回転させたり、棒を長く伸ばしたりと、いろんなことをやっている。
なんでこんなことをしたのかというと、元のゴシックMB101Hだと、太くて角張っているので、もう少し柔らかい表情を持たせたかった。だから丸みを付けたのだ。元のフォントというのは、当然うまくバランスが取れている。普通はそれでいいのだが、この本は少し間の抜けた笑いのある旅行記なのだということを表すのに、均整の取れた文字よりも、少し崩れた文字の方が似合うのではないかと思ったので、わざと文字のプロポーションを崩したのだ。手書き文字という手もあるが、それだとあまりに癖が強すぎると判断した。意図が伝わるといいんですけど(漠然と雰囲気が伝わればいいんです)。
午前中に、ある書店から電話があって、お客様から『わけいっても、わけいっても、インド』という本の予約が入ったんですが、その本は本当に9月1日に出ますか? という問い合わせがあった。誰が予約してくださったかはわからないが、あなたが予約第1号です。うれしいです。ありがとうございました。
【追記】さっき校正刷りがあがってきた。うーむ、なんということか、私が渡した台割りにミスがあって、カラーページでないところがカラーページになっていた(つまり1色の写真が4色印刷になっていた)。それどころか、カラーページのページ数を数え直してみたら、96ページじゃなくて、112ページだった。まったくもってマヌケだねえ。書店の注文書にもぜんぶカラー96ページって書いちゃったよ。とほほほ。