地図ができるまで

 ただいま本誌次号(160号/6月1日発売予定)を制作中。次号の特集はキューバです。ニュースを見ていたら、オバマ大統領がキューバに対する経済制裁を緩和するといっていた。これから、キューバはどんどん開かれた国になっていくのだろう。

 キューバはこれといった日本語版のガイドブックも出ておらず、『地球の歩き方』の『カリブ海の島々』というタイトルの中で紹介されているだけだ。その意味では、今回の本誌の特集は、富永さんの地図もたくさん入るし、キューバへ行きたいと思っている方にはいいガイドになると思う。ご期待下さい。

 ところで、ガイドブックなどに掲載されている地図は、どうやってつくられているかご存じだろうか。知らなくたって、取材者が市販されている地図に、ホテルやレストランや見どころなどの場所をチェックして、それを出版社(あるいは制作会社)に渡し、それを見た目のいい地図に仕上げるのだろう、という想像はできる。

 ま、だいたいそれで間違いはない。だが、富永さんがいうには、市販の地図は間違っていることが非常に多いのだそうだ。だから、そのまま使うのは、著作権も含めていろいろ問題が多い。これまで富永さんは、市販の地図をベースにしながら、方位磁石を手に、地図の作成範囲をすべて歩いて地図を製作してきた。富永さんは自分の歩くペースを把握していて、何分歩けば何メートルになるかがわかるのだそうだ。それで磁石で方向を計って地図を制作してきた。

 例えば『旅行人ノート・チベット』の辺境の町や村などは、中国なのでもともと地図など存在しない。富永さんは、そういうところをすべて自分で歩いて測量し、地図を製作してきたのだ。だから、この本にしか地図は存在しなかった(というわけで何度も盗用され続けてきた)。

 だが、最近は事情が急変した。皆さんもよくご存じのように、グーグル・マップの登場によって、世界の町や村の地図が、ほとんどどんなところでも見ることができるようになったのだ。私はわざわざガイドブックの地図とグーグルの地図がどう違うかなんて見たりはしないが、富永さんにいわせると、これで地図の間違いが一発でわかるようになったとか。まあ、それはそうであろう。

 だからといって、グーグルの地図で間違いを訂正できたとしても、グーグルの地図をそのまま印刷できるわけではもちろんない。あくまで参考にするだけで、取材は必要だし、その取材データを印刷できる状態に仕立て直さなくてはならないのは、以前と同じである。これまで読者にお見せしたことはないが、地図ができるまでの課程を、順を追ってお見せしましょう。

(1)まず、これが富永さんの作成した地図データ。これを下敷きにして、道などを入れていく。使用するソフトはアドビのイラストレーターです。

(2)これで、道路、建物、レストランやホテルのマークなどが入った。次に文字を入れ込む。

(3)文字を入れて、下に敷いた元地図を消すと、ほぼ仕上がりの地図ができあがり。これぐらいの地図を1枚つくるのには、だいたい5〜6時間ぐらいかかる。これを元に校正して、修正して完成という手順である。

 以前は、『旅行人ノート』を制作するときに、地図の枚数も多いので、フリーの方に手伝っていただいていたが、今は全部、私と小川京子で制作している。

 次号は、こういうキューバの地図が13枚も掲載されるので、よろしくお願いします。
 では、また仕事に戻ろうかな。