新年早々景気の悪い話

 そろそろ正月気分も抜けた頃だと思いますが、本年初の当欄です。今年も旅行人および当欄をよろしくお願いします。年賀状を下さった皆様、ありがとうございました。

 さて、新年早々、あの新風舎会社更生法を申請したとの記事を見てびっくり。ばかすか儲かっているのだろうと思っていたんだけど、栄枯盛衰、あれほど飛ぶ鳥の勢いだった(ように見えた)出版社が、かくも早くダメになってしまうとは。いやはや、なんとも。

 などといっていたら、昨日は草思社が倒産した。出版不況の象徴などと書かれたらしいが、ちょっと前までは出版不況の中にあって、草思社こそが「勝ち組」出版社だといわれていたではないか。それがあっという間に転落するんだから、まったく世の中油断がならない。

 こういってはなんだが、新風舎はほぼ自費出版会社なので、すでに契約金を支払った人々以外あの会社を建て直すメリットがあるとは思えない。出版不況ともあまり関係なく、悪評が立ち、訴訟が多くなったので、収入源の著者を獲得できなくなって倒産したわけで、新風舎の本がもったないからとか、買えなくなるのが惜しいという声はあまり聞こえてこない(多少はあったようですが)。

 それに比べれば草思社の倒産を惜しむ声は多いわけだが、しかし、新聞を見ると、「最盛期の97年には31億9000万円の売り上げがあったが、昨年は13億6000万円に落ち込んでいた」とあった。草思社の社員数は36人だそうだが、これだけの社員数で、売り上げが13億6000万円もあって、なんで倒産するのか、超零細企業の社長には理解に苦しむ。超優良企業じゃないよ。

 いくら売り上げがあっても、じゃかすか使ってしまったら倒産してしまうのだよ、と兄がいう。だいたい22億円の借金なんて無茶苦茶だという。いったいなんでこんなに借金する必要があるのか、超零細企業の社長である私には理解できない。最盛期には売り上げが32億円もあったんでしょ。社員一人当たり1億円近くも売り上げていたら、借金などしなくたって資金はがんがん回っていくはずじゃない?

 というところで、昔見たNHKの番組を思い出した。そう、その番組はこの草思社がいかにしてベストセラーを作りだしていくかを描いたものだった。『金持ち父さん、貧乏父さん』といった巧みなタイトルで無名の著書をベストセラー化していった草思社の手腕は業界でも高く評価されていた。番組では、その編集会議から営業戦略までをレポートしたが、超零細企業の社長には考えられないほど巨額な費用を広告・宣伝費につぎ込んでいた。

 なんでこんな借金を抱え込んだのか本当のことはわからないが、あの番組を見る限り、広告費の使いすぎだったんじゃないかと思える。そうやってベストセラーを作りだしていった手法は評価されていたわけだし、草思社も今度こそ起死回生のベストセラーを出してやろうとがんばった結果が、22億という巨額の負債だったのではないだろうか。誰しも成功体験は忘れられないものである。夢よもう一度、あと一度、といっているうちに抜けられない泥沼に入り込んでいった……のじゃないかなと思いますね。

 新年早々景気の悪い話で申し訳ないが、世の中はまた不況に突入していくという話もあるし(今までよかったというのも信じられないんだけど)、気持ちを引き締めて今年もなんとか乗り切っていきましょう。