新しい掃除機

 更新するのがどんどん遅れて、週刊「編集長のーと」のはずが、旬刊になり、月刊になりつつある。このままいくと本誌と同じ季刊になるのもそう遠くないかもしれない。すんません。

 ところで、突然のことだが、掃除機を買った。先日、友人が遊びにくるというので、あわてて掃除を始めたら掃除機が壊れてしまったのだ。考えてみれば、この掃除を買ったのは15年ほど前である。普通はそんなに長く使えないはずだというが、うちの場合は15年前に買って普通の人の10分の1も使わなかったので、ここまで保持することができたのである。最近ちょっと心を入れ替えて、二日に一度は掃除機をかけることにしたら、数カ月で壊れてしまった。というわけで、近所のヤマダ電気に行って掃除機を買い求めた。

 ヤマダ電気には数多くの掃除機が並んでいた。価格も下は数千円のものから上は5万円ほどのものまでさまざまなのだが、どれを買えばいいのかさっぱりわからない。ただ、これまで使っていた掃除機には不満な点があったので、その不満が解消されるものにしようと考えた。

 不満点その1は、先端の吸い取り部分(T字型の部分)が大きすぎて、狭いところに差し込めなかったことである。だから、T字部分の横棒部分が短いものを買おうと思った。が、今の掃除機はほとんどみんな狭くなっているのだった。やはり同じ不満を持つ人が多かったのだろう。

 不満点その2は、モーターを積んでいる本体部分の運動性能が悪いことである。掃除機をかけるときは、右に左に本体をひっぱりまわすことになる。これまでの掃除機はそうやって引っ張ると、すぐに転倒するのである。全方向にもっと機敏に動く運動性能が要求された。

 が、これは店頭では試せない。店の床を右に左に引っ張り回すことはできないからだ。大いに不満が残るところだが、どの掃除機もうちのより車輪が大きくなっている。たぶんこれで改善されているのだろう。

 不満点その3は、手で持つ部分のパイプが短すぎるという点である。おそらく女性用に設計されていたのだろうが、僕がこれでやると腰を曲げなければならず、腰痛を引き起こす一因となった。だから、自分の身長に合った長さのものが欲しかったのだが、これも時代が変わったせいか、すべての掃除機のパイプは伸縮調整がきくのだった。

 というようなわけで、このような不満点は、どの機種においても解決されているようであり、ますますどれを選べばいいのか迷う。それなら値段の安いものにすればいいというのがいつもの買い方だ。上の基準を満たすものは、だいたい3〜5万円の製品である。だが、そういう掃除機を見ても、まったく心が弾まない。わくわくしない。それらは安っぽい電化製品そのものであり、ラジカセや電話機に共通するデザインの退廃というか、やっつけデザインというか、買う気が起こらないものばかりなのである。

 掃除機を買うのにワクワクする必要があるのかという疑問もあるだろう。あるいは掃除機にデザインを要求するのはやりすぎではないかとお考えの方もあろう。それは根本的に間違っていると私は言いたい。掃除機というのは、普通の人は毎日使用するものである(らしい)。電話だって、冷蔵庫だって、テレビだって毎日使うし、部屋の中の存在感もそれなりにある。こういう日常的に使う品物のデザインがいいかげんであることが僕には許せないのである。

 そんなものはどうでもいいという人はそれでもいいが、同じ性能なら少しでもデザインがいいものを買いたいと僕は思う。それに、ただでさえ掃除というのはつまらないのだ。せめてワクワクするようなデザインの掃除機で掃除がしたいではないか。

 と思っていたら、掃除機コーナーの片隅に、マッキントッシュ・コンピューターのようなスケルトンの掃除機があった。まるでiマックが掃除機に変身したようなデザインである。これはいいかもしれない! 値段を見たら、8万円。う〜む、これは高い。8万円だったらマックは無理でもウインドウズマシンが買える。それでも未練がましく見本品をいじっていたら、店員がやってきて7万5000円にするという。それでも高い。

「これはイギリス製なんですよ。ダイソンというんですけど、テレビのコマーシャルで見たことはないですか?」
 ああ、そういわれたら見たことがある。それどころか、私の友人がとても欲しがっていた掃除機だ。私の友人Yさんは家庭用品マニアで、ホーロー鍋やオーブンを収集している。そんなものを集めてどうするんだと思うが、見せてもらうと、それが非常にいいデザインなのである。もちろんオーブンなんか1台あれば十分だが、彼はネットで安くて状態のいい昔のオーブンを入手して喜んでいるのだ。
「だって、すごくいいデザインだと思わない?」
 そのことには同意する。その人が、このダイソンを欲しがっていたのを思い出した。

 すると店員がいう。「これにはポイントが10%付きます」うーん、そうすると、まあ6万7500円だと考えられないこともない。うーん、友人Yブランドだし、買おう!

 というわけで、僕は今そのダイソンを使って2日に1度ほど掃除をしている。3日に1度ということもあるが。性能は特に悪くはない。以前のものに比べればよいと思うが、現在売っている、もっと安い日本製よりいいかどうかは不明である。これまでのように紙パックを使う必要がないのは便利だが、音が強烈にうるさいのが難点である。

 この掃除機で最も驚いたのが、故障時の対応である。説明書にはこうある。故障したら本体に付いているランプが点灯する。そうなったら、電話をそこに近付けてダイソンに電話し、本体のボタンを押すのだという。すると、ファックス信号が発信されて、どのような故障であるかがダイソンに報告されるのである。要するに掃除機から直接状況が報告されるというわけだ。これは故障したときが楽しみである。もしかしたら「ここの連中は使い方が荒くてかなわん」なんていう報告をされるのか?